飛行機やバスでなくゲレンデの占拠(?)ということで白銀ジャック。ただし犯人はずっと隠れたままのため、サスペンス的な白熱感はあまりありません。あっと驚くような派手さはありませんが、氏ならではの安定感ある手堅い作品という印象です。
最近、東野圭吾さんの新刊はガリレオシリーズくらいしか買ってません。よほど評判になっていない限り、単発物のために単行本まで買おうという気にならないので。今回は「実業之日本社文庫」創刊記念ということでいきなり文庫での新作。大変ありがたいことです。
ゲレンデに爆弾を埋め込んだということで身代金を要求してくる犯人。電話の陰に隠れっぱなしのため、○○ジャックならではの臨場感はありませんが、広いゲレンデにおける身代金の受け渡し方法が、本作品における一つのキーポイントとなっています。
もう一方の軸として、一年ほど前に起こったスノーボーダー飛び出しによる死亡事故があります。いまだ捕まらない犯人と心に傷を負った少年。そちらの話がどのように絡んでくるのか、流石の手腕にはうならされること請け合いです。ちなみにマナーの悪いスノーボーダーには作品全般ちょっと厳しい論調です。ボーダーの人はむかっとくるかも(^^;
人間関係の機微については相変わらず淡白ですが、ヒロインらしき人物も二人ほど出てきてくれたりするので、そこそこには感情移入して読むことが出来ます。恋愛方面の行方についてもまずまずのところに落ち着いてくれるので、読後感は悪くありません。
過去に高い評価を受けた作品をたくさん持つ筆者ですので、それらの作品と比べてしまうと若干の肩透かしは感じられるかもしれませんが、私としてはこれほど端正にまとまったミステリは久しぶりに読んだ気がきます。オチにもそれなりに驚かされたので、東野圭吾ファンであれば読んで損することはないかと思います。
評価:★★★★☆
2010年10月7日木曜日
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