2010年10月18日月曜日

アー・ユー・テディ?(加藤実秋) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

浮ついた印象のヒロインが、熊のあみぐるみに乗り移ったおっさん刑事の霊と事件の捜査をするお話。設定には何の魅力も感じませんでしたが、筆者買いしてみたら存外面白かったです。「インディゴの夜」シリーズ同様、登場人物たちの何気にいい人振りが嬉しいです。



ほっこり系を身上に、ファッションやインテリアに一家言持つ(つもりの)24歳フリーター「山瀬和子(やませかずこ)」。彼女が代官山のフリーマーケットで手に入れた熊のあみぐるみ(ぬいぐるみではないらしい)には、無念を抱えた50過ぎの刑事「天野康雄(あまのやすお)」の霊が乗り移っていました。うるさい彼の依頼をうけて、事件捜査のバイトを引き受けることになります。

30過ぎのファッションに縁が無いオッサンとしては、ヒロインの言動が逐一むかつきます(褒めてます)。決め顔はちょっと唇をすぼめた感じのアヒル顔。こういうことが書けるのは、女性作者ならではという気がしますね。女性に対して夢見る気持ちをぬぐえない男性一般としては、このような女性の「計算」はわかりにくいし、わかってても目をそむけていたい類のものなので。

こんな女と、刑事一筋30年のおっさんのコンビでは、揉め事の起きないはずがありません。いつも口うるさく説教してくる康夫をあみぐるみから追い出すためにも、早急な事件解決へのモチベーションが高まるのは逆に皮肉なことです。ちなみに康雄からはきっちりバイト料をもらうことになります。詳しいところは本書でご確認いただければと思いますが、通帳から勝手にお金を引き出さない和子は何気にいい子です。

あい方が幽霊かつオッサンとあっては当然ロマンスなどひっくり返っても出てきません。そちらは康雄の元部下「冬野唯志(ふゆのただし)」が一応それっぽい感じになります。見た目は良くてもオカルト好きが災いして変人のレッテルを張られている彼は、いろいろな意味で和子にぴったりのお相手です。和子本人はそれを頑なに否定していますが。

全般的に手堅い印象の作品です。康雄が心を残す事件の内容についても、その捜査や顛末についても、実に地味で手堅い題材が選ばれています。あらゆる意味でヒロインとのギャップが感じられるところにおかしみが感じられます。作品の雰囲気としては正直それほど好きな部類でもありませんが、読みやすくてミステリとしての出来も上々です。続きが出ればまた購入するでしょう。

評価:★★☆☆☆

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