厳密に言えばミステリではないけどミステリ風のライトノベルというのは良くあります。本書の場合はミステリっぽくないけどミステリと謳っているライトノベルです。いろいろな意味でちょっと不幸な作品といって良いのではないでしょうか。
ミステリ作家の似鳥鶏さんとは全く関係ないようですが、それでも名前からある種の期待感をあおられた方はいらっしゃるのではないでしょうか。私もその一人です。似鳥鶏さんや、同じ電撃出身の久住四季さんなんかが比較対象になってしまうと流石にしんどいですね。
なんとも、徹底的にミステリに向いてない作風だなというのが読後の印象です。ミステリ的カタルシスを微塵も感じさせない、そういう努力さえも見られないのは、ある意味凄く新しいのではないかと思ってしまいました。バカミスともちょっと違う感じですし。
電撃文庫というのを意識してのことかもしれません。あとがきによると「ラブコメ」+「部活もの」+「日常系ミステリー」を目指していたとか。ミステリというジャンル自体は正直なところ斜陽分野ですし、既存の雰囲気にとらわれないチャレンジ精神は歓迎されるべきものかもしれません。
ただ、単なるラブコメものとして考えたとしても、もう少し頑張ってほしいかなというところはあります。随所に笑いを誘われるコミカルな文章ではあるのですが、主人公の性格や地の文章での擬音の使い方があまりにラノベな方向に走りすぎていて、読み進めるのが少々疲れてしまいます。
筆者のミステリ愛は随所に感じられました。ミステリファンならにやりとするネタも見られます。ただ、名作のパロディみたいなのはいいのですが、ミステリのトリック自体をほのめかすのはグレーゾーンのような気もします。オランウータンのネタとか。作品名を明かさなければ良いというものでもないような・・・
ライトノベルという枠での作品ということを考えると、こういうミステリともいえないミステリという作風もありなのかなという気はします。ただ、もう少し主人公が格好いいとかトリックが秀逸であるとか、何か目を引く長所があると読む側としてはうれしいですね。
評価:★☆☆☆☆
2010年10月10日日曜日
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