2010年10月2日土曜日

ローマ人の物語〈27〉すべての道はローマに通ず〈上〉(塩野七生) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

今回は特別編。ローマ全時代を通じてのインフラをテーマとしたお話し。上巻ではハード面、特に街道や橋について語られています。筆者も冒頭で懸念しているとおり、歴史物語ではないため面白さという意味ではいまいちかもしれませんが、写真も多くてそれなりに楽しめました。



本書がいまいち面白みにかけるのは、インフラを扱っているからという理由ではなく、それらの一番大事な点については既に語れてしまっているためです。スキピオやカエサルによる華々しい戦記の合間にも、インフラについては重要なものとして逐一言及されていました。

だからといって、本書に価値が無いというのではもちろんありません。本筋の歴史の片手間で触れるにはちょっと冗長になりそうな、実際の街道や橋の作りについて詳細が語られています。たくさんの絵入りで説明されているため、素人にもなかなか分かりやすかったです。

土木や建築で専門的な仕事をしている方ならより面白く感じられるのではと思います。ただ、この巻だけだと意味が通らなさそうなのが難しいところです。アッピア街道の時代背景など、既刊を読んでいないと追いつかなさそうなところが多々あります。

そもそも、このシリーズ全体を通してつまみ読みが難しそうだなという印象を感じています。前時代のうちに、それより少し後の時代の予告編をちょこちょこ入れるのが筆者の得意とする手法です。そのため、ベストの読み方は「最初から続けて読む」になってしまいます。

もっとも、それが欠点というのでなく、だからこそ物語として面白いというところがあります。下巻では教育や医療などソフト面のインフラにも触れられているようなので、私としてはむしろそちらのほうが楽しみかもしれません。

評価:★★☆☆☆

続き:
ローマ人の物語〈28〉すべての道はローマに通ず〈下〉(塩野七生)

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