2010年10月30日土曜日

古時計の秘密(キャロリン・キーン) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

少女探偵ナンシー・ドルーが活躍する児童向けミステリのシリーズ第1弾。日本でも古くから児童書として出版されているらしいので、ご存知の方も多いかもしれませんが、私は寡聞にして初めて知りました。



そもそも、この表紙絵からナンシーが18歳と予測できるでしょうか。颯爽と車を乗りまわすアクティブな女性という実像からはかけ離れた絵柄ですね。まあ、確かによくみればスタイル良いですけれど。ちょっぴり騙された感じです。学校を卒業したばかりのお気楽な立場で、弁護士の父「カーソン・ドルー」の手伝いをしています。

内容を一言であらわすと、言葉は悪いですが「子供騙し」ですかね。富豪「ジョサイア・クローリー」の遺産をめぐり、ナンシーが遺言状探しに乗り出しますが、不正に相続している「トプハム一家」が典型的な悪人役です。正直トプハムさんたちがかわいそうになるくらいの勧善懲悪ストーリー。

クローリーが生前世話になったり気にかけていたりした人たちに遺産が分与されることになるわけですが、どうも直接お金がからんでくるだけに妙に生々しいです。みな良い人設定のはずなのに、ひねた大人としてはどうしても裏側を疑いたくなってしまうという。

日本で児童書として紹介される場合は、読みやすいようにところどころを省いた抄訳がほとんどだったそうです。正直、原文改変はあまり褒められたこととは思えませんが、本書については児童書として出すならある程度生臭さを省くのは必要だろうなという気がします。

優秀な少女探偵という触れ込みですが、クールな推理は全く登場しません。自明と思われる出来事の裏を取っていく、どちらかというと探偵としては地味な感じですが、危機シーンの演出はなかなか良かったです。ナンシー・ドルーに懐かしさを感じる方々にとっては、本書を通して色々な再発見も期待できるのではないでしょうか。

評価:★★☆☆☆

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