2010年10月4日月曜日

秀吉の枷〈上〉(加藤 廣) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

「本能寺の変」三部作の2作目。信長の死の真相を追うというちょっと地味目だった前作と比べて、主役が秀吉ということでいかにも歴史小説らしい華々しい展開をみせてくれます。ただし、前作から引き継ぐ独自の設定は健在。新鮮な視点を提供してくれます。



秀吉に関わる小説は世にたくさんあるかと思いますが、「山の民」の設定と本能寺の変への関与が、本作品のオリジナリティを支える肝となっています。これは前作とも深く関わってくる設定なので、「信長の棺」のほうを先に読んだほうがスムーズに話に乗れると思います。

「山の民」とは先祖を藤原氏とする隠匿の民のことで、筆者独自の設定です。空想といってしまえばそれまでですが、本シリーズではこの設定が色々な歴史的事象を解明するキーとなっています。歴史に詳しい人ほどニヤリとできるのではないかと思います。

また、本能寺の変の真相について、前作でもちらりと触れられていた秀吉の関与がいかなるものであったのかが本書で明かされています。ただし、特に「明智左馬助」の動きに絡んで、思わせぶりな謎がまだちらほら残っています。このあたりは続編のほうで明らかにされるかと思いますが、あおり方が実に上手です。

信長の死の真相が本シリーズを通じた一つの軸になっているかと思いますが、普通に秀吉の戦記物としてもなかなか面白いです。竹中半兵衛、黒田官兵衛、羽柴秀長、蜂須賀小六、前野小右衛門ら側近達の活躍が鮮やかに描かれています。

本巻ラストで起こった本能寺の変への秀吉の関与。これが後の展開にどう影響してくるか楽しみです。それにしても、前作で秀吉が太田牛一に訳知りっぽく対する場面がありましたが、今のところ全く出てきませんね。次巻以降の楽しみということになるでしょうか。

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