上巻での重要な伏線は一応解決を見せているようですが、もしかしかすると続編を読まずに本書の評価をするのは難しいのかもしれません。歴史解釈はやや空想的な感じを受けましたが、入念な調査に基づく時代背景の丹念な描写がすばらしい作品だと思いました。
本能寺の変における信長遺体消失の謎に真っ向から取り組んだ本書ですが、史実に忠実に推理を進めているためか、エンターテインメントとしてはそれほど面白みは感じられなかった気もします。戦国時代に詳しい方なら、もっと楽しめるのかもしれません。
丹波者が急に出てくる流れが若干唐突というか、ちょっぴり胡散臭い感じがしました。別に怪しげな忍術を使う集団というわけでもないのですが、その設定からしてどこまで本気で捕らえてよいのか分からない存在です。
やはり私の歴史疎さが障害となっているのかもしれません。どこまでが本当か見抜けないので、全体的な印象もフィクションとノンフィクションの狭間で曖昧に感じられてしまいました。
単純に読み物としてみたとき、主人公の太田牛一なかなか好感の持てる人物です。著述家でありながら青瓢箪な学者ではなく、若いころは弓の腕で鳴らした巨漢。それでいて清廉潔白な人物であるところにミスマッチの妙を感じさせます。女人に弱いのも人間的で良いですね。
本書だけみると、読み物としてはどうかなと思う部分もあるのですが、続編に連なる伏線がところどころに残されているようで、俄然気になるところです。
評価:★★☆☆☆
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2010年8月17日火曜日
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