2010年8月26日木曜日

ローマ人の物語〈21〉危機と克服〈上〉(塩野七生) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

ネロが自死においやられたのち、ガルバ、オトー、ヴィテリウスと、たった1年間に3人もの皇帝が死んでしまいます。ガルバとヴィテリウスについては自業自得だけど、オトーはちょっぴり可哀想でした。駄目皇帝達の争いよりも、裏で動くヴェスパシアヌス擁立の動きが面白いです。



世襲というと悪く取られがちですが、周囲に対して何がしかの納得を与える材料とはなりえます。地盤を引き継ぐ政治家についても同様ですね。これらの内紛劇は、アウグストゥスの血統が絶えたことにより起こった、必然的な混乱だったのかもしれません。

私のいるシステム業界でも同様のことが言えるのですが、危機的状況における指導者には二つの資質が求められるのだと思います。一つ目は、前線を経験し修羅場をくぐっていること。二つ目は、気配りに長けてあらゆる方向に目が行き届いていること。現場の臨場感に対する想像力が何よりも重要ですね。彼らには皇位継承の正当性だけでなく、それらの資質も欠けていました。

もっとも、ガルバもヴィテリウスも皇帝の地位に舞い上がってしまったちょっと残念な人たちだったのに対し、オトーはちょっとかわいそうでした。ガルバを廃して新皇帝になったは良いものの、同じくガルバ打倒を旗印にしていた、ヴィテリウスを担ぐライン軍団がすでに軍事行動を開始していたため、なし崩しに戦闘状態に突入してしまったのでした。

帝位争いはライン軍団やドナウ軍団など北方方面の軍事力を巻き込むものとなってしまったため、もはや武力なしの解決はありえない状況となります。それに対し、もうひとつの前線である東方方面の対応は実に見事なものでした。シリア総督ムキアヌス、ユダヤ戦役総指揮官ヴェスパシアヌス、エジプト長官ユリウス・アレクサンドロス。3人の有力者たちがクールで統制の取れた連携を見せます。

最終的にヴェスパシアヌスが帝位に就くことで内乱はようやく収まりますが、これが東方軍団によりたった一年で成し遂げらたというのは、当時の情報伝達網の遅さを考えれば驚異的なことだと思います。とはいえ、帝位が収まっても混乱のつけは大きかったのでした。彼ら3人には辺境の反乱を治めるという尻拭いの役が待っています。

評価:★★★☆☆

次巻:
ローマ人の物語〈22〉危機と克服(中)(塩野七生)

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