政治と縁のない歴史学者として暮らしていたクラウディウスが、50歳にしていきなり第4代皇帝として祭り上げられます。公務は一生懸命やるけど奥さんには何もいえない、日本人としてはちょっぴり親近感の沸く皇帝かもしれません。
とにかく容姿がぱっとせず、どもり癖があって演説下手と来ては、人気も期待も生まれるはずがありません。しかし、アウグストゥスの血筋というだけで帝位についた割には、なかなかの奮闘を見せてくれます。先代皇帝カリグラの失政をことごとく尻拭いし、ティベリウス治世化の政策を再建してローマに平和を取り戻します。期待されずに就任して思わぬ成果を出してしまったあたり、小渕恵三内閣をちょっと思い出しました。しかし、この歴史家皇帝の悪評を高めたのは二人の奥さんなのでした。
3人目の結婚相手であるメッサリーナはクラウディウス即位時わずか16歳。突然落ちてきた后妃の座に舞い上がるのも無理はないかもしれませんが、権力の乱用はともかく男漁りのため下賎な娼家で客を取るとなるとなると、開いた口がふさがりません。挙句ただの不倫でなく旦那不在の好きに二重婚までしてしまうとは・・・最後は側近にすっぱり殺されてしまいます。もしかして、グイン・サーガにおけるグインの王妃シルヴィアのモデルなのかもしれません。
二人目の皇妃アグリッピーナは先代カリグラの妹でクラウディウスの姪にあたります。叔父と姪で結婚とか、当時のローマでも考えにくい血の濃さだったようですが、成文化された法がないのを理由に押し通しということでしょう。まぁ、実の子供は生まれなかったので、純粋に政略的な意味合いだったのかもしれません。アグリッピーナは先妻の子を差し置き、自身の連れ子「ドミティウス」の擁立に動きます。そして、準備が整うと同時にクラウディウスを毒殺、こぇー・・・。メッサリーナと違い有能であるだけに一層たちが悪い(^^;
クラウディウス帝も人気がなくて、史書には悪評ばかりだったそうです。その評価が高まるのは、ティベリウス同様に後世の考古学発展を待たねばなりませんでした。カエサル、アウグストゥス、ティベリウスと比べると人物としては明らかに見劣りしますが、良き指導者のあり方というのは一様ではないということだと思います。そして次巻、ドミティウス改め「ネロ」の治世となります。
評価:★★★☆☆
関連レビュー:
ローマ人の物語〈18〉悪名高き皇帝たち(2)(塩野七生)
続き:
ローマ人の物語〈20〉悪名高き皇帝たち(4)(塩野七生)
2010年8月12日木曜日
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