ティベリウスの「家出」。よっぽど元老院やアウグストゥスの子孫達がうるさかったようです。とはいえ公務は投げ出さずに完璧に勤めた彼のあとを受けたのはやんちゃな皇帝「カリグラ」。民主党政権のごとき大盤振る舞いの末に4年を待たず暗殺されてしまいました。
ティベリウスは本書のタイトル通りとても評判の悪い皇帝だったようで、歴史家の「タキトゥス」なんかもボロクソに書いていたそうです。彼の評価が変わったのは、考古学が発展し歴史家の著作以外の情報も増える19世紀以降のことだとか。
民衆へのアピールも政治家の重要な能力なので、その観点からいくとティベリウスを一流の政治家と評することはできないのかもしれません。でも、派手なアピールを嫌い必要なことを寡黙により遂げる姿勢は、いかにも日本人好みな気質ではないかという気もします。
カプリに隠遁してしまい、ローマに姿を一切みせなくなったティベリウスには元老院からも民衆からも大ブーイングがおきます。しかし、リモートコントロールで政務に滞りをみせなかったところは流石です。
思うに、もしそれが本当に必要だということなら、ティベリウスは嫌々でも人気取りをやったのではないかと思います。既に誰にも太刀打ちできない十分な権力を保持していたからこそ、意味のないご機嫌取りに見切りをつけてしまったのではないでしょうか。
さて、人気のない皇帝のあとを継いだのは若干24歳、アウグストゥスのひ孫に当たり容姿も優れた「カリグラ」です。元老院も民衆も属州も諸手を挙げて大歓迎する様子は、政権交代を果たした民主党の勢いを思い起こさせます。
で、調子にのってティベリウスが作った貯金を食いつぶしたあとは金策に苦しみ、現炉印からも民衆からもそっぽを向かれ、デリケートなユダヤ民族とも波風を立てた上で、幼少よりの重臣によりあっさり暗殺されてしまいます。才能はあっても自制心のなさが決定的でした。
次巻は、齢50にして突然皇帝の椅子が転がり込んできてしまった、クラウディウス帝です。アグリッピーナの暗躍とかあるんですかね。きな臭さがどんどん増してきます。
評価:★★★☆☆
続巻:
ローマ人の物語〈19〉悪名高き皇帝たち(3)(塩野七生)
関連レビュー:
ローマ人の物語〈17〉悪名高き皇帝たち(1)(塩野七生)
2010年8月9日月曜日
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