2010年8月25日水曜日

ストーンエイジCOP - 顔を盗まれた少年(藤崎慎吾) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

コンビニが警察業務のアウトソーシングを担う近未来が舞台です。ストーンエイジとは文字通り石器時代のこと。主人公の「滝田治」が類人猿のようなゴツイ容姿であるのが本書タイトルの由縁のようです。



現代日本にアマゾンのジャングルが融合したような奇怪な世界観。爬虫類などの逃げ出したペットが独特の生態系を築く一方、遺伝子技術の発達により、人は簡単に容姿を変えられるようになったりしています。

サブタイトルともなっている、顔を盗まれた11歳の少年「高橋健一」は、二人暮らしの母親に黙って容姿を人気のゲームキャラに変更したところ、元の彼にそっくりの偽者に取って代わられてしまいます。

コンビニ強盗の一味として捕まえた健一の境遇に不審を抱いた滝田は、その謎について調査を進めていくうちに、とある大企業の暗部に突き当たることとなります。巨悪と戦う、まさにストーリ自体は王道のど真ん中を突き破るものですが、背景の設定が設定だけに、異様な風情をかもし出しています。

ホームレス集団、とりわけ行くあてをなくした健一も頼った<山賊>と称す若者グループが、本書のなかでも一番の活気を見せてくれる存在です。ジャングルのような奇妙な生態系の発達により食料の入手がしやすくなり、ホームレス達も独自に自立化、組織化されてきているのです。

<山賊>のメンバーで13歳の少女ミューが、ヒロイン的位置づけとなるのでしょうか。ただし、仲間内で娼婦の役割を担っているため、そういうのが嫌な人は避けたほうが良いかもしれません。くらげの遺伝子により青白い光に包まれる、透き通るような肌の美少女。彼女がゴリラ男の滝田を意識するようになるきっかけについては、本書をご確認ください。

ごつい割りにやさしい滝田の性格と、何がなんだか分からない生態系が素敵な模様を描き出す本作品。続編があるほか、今年10月には最終第3巻も発売予定だそうです。続編のほうも先に文庫化してくれるとありがたいのですが・・・

評価:★★☆☆☆

関連レビュー:
ストーンエイジKIDS―2035年の山賊(藤崎慎吾)

0 件のコメント:

コメントを投稿