2010年8月13日金曜日

遺品(若竹七海) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

設定としてはとても直球なホラー作品なのですが、ブラックではあってもあまり怖くはないので、ホラーが苦手な方でも安心して手にとっていただけるかと思います。サスペンス仕立てで最後まで一気に読んでしまいましたが、オチについてはちょっとモヤモヤした感じでした。



美術館閉鎖に伴い無職となった元学芸員の「わたし」に、女優であり作家でもあった「曾根繭子」の遺品を整理し、客寄せのため一般公開する手伝いをしてほしいとの依頼が来ます。場所は金沢の山の中にあるリゾートホテル「銀鱗荘」。ホラーの舞台としてはこの上なく良い雰囲気です。

遺品の整理をするうちに、お約束どおり色々な怪異がおきます。それぞれの事件については結構凄惨なものもあるのですが、著者特有のクールな文体のため、さほど真に迫った怖さは感じられません。ホラーファンには物足りないかもしれませんが、怖いものが苦手な私にはちょうど良かったです。

徐々に盛り上がっていきクライマックスに至るまでは完璧な展開だったのですが、最後はこう落とすのかぁ・・・と少し拍子抜けしました。ミステリではないので論理的な解決を求めているわけではなかったのですが、なんとなく唐突というか、腑に落ちない印象が残ってしまいました。

あまり感情を揺さぶるような作品ではありませんが、だからといって物足りないということではありません。丹精でクールな展開はとても私好みでした。ラストに「クール・キャンデー」のような強烈なオチがあれば満点だったのですが、少なくとも本書を読んで損するということはないでしょう。

評価:★★☆☆☆

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