中巻の続き。天下を取ったのは秀吉でも、血統争いでは淀の方にやられて敗北ということになるでしょうか。ミステリとしてみると構成の甘さを感じますが、純粋な歴史物として面白かったです。
秀吉の枷というタイトルからも、本能寺の変への関与が落とす影を主題としたかったであろう筆者の意図は分かります。ラストのあたりで前野将右衛門らの口を借りた真相が明らかにされるあたり、その試みは成功しているといってよいと思います。
ただ、本筋の歴史ものとしての面白さが、本来の意図をぼやけさせてしまった感は無くもありません。淀の方懐妊にまつわる疑惑、家康との駆け引き、朝鮮出兵、秀次失墜の真相など、興味深い話がてんこ盛りです。
もちろん、各エピソードのそれぞれに「枷」が絡んできてはいるのですが、それはあくまで諸原因の一つというように感じられました。文庫にして3冊と、3部作の中で一番の大著ではありますが、シリーズ全体の位置づけで見ると本作は外史に過ぎないのかもしれません。
俄然、続編「明智左馬助の恋」が楽しみになってきました。本作でもところどころに未回収の伏線が散りばめられているため、ミステリ成分の期待もより大きくなろうというものです。
評価:★★★☆☆
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明智左馬助の恋〈上〉(加藤廣)
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2010年10月6日水曜日
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