2010年10月31日日曜日

舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵(歌野晶午) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

中年刑事が姪の言動をヒントに事件を解決していく連作短編集。それぞれの事件が微妙にリンクしていて、最後にはちょっとしたサプライズが待っています。



歌野晶午さんの作品は、高校時代に読んだ「長い家の殺人」がいまいちあわなかったため、長らく手に取ることがありませんでした。やはり作家の真価はデビュー作で判断するものではありませんね。

タイトルに反し、ひとみが直接事件を解決する少女探偵というわけではありません。姪の彼女のふとした言葉をきっかけに、34歳の刑事「舞田歳三(まいたとしみ)」が事件解明の手がかりを得ます。三毛猫ホームズのようなノリです。

とはいっても、ひとみ自身はなかなか賢い子供のようです。5話目で胡散臭い選挙活動しているおばさんをやりこめた手口は実に痛快。学校の成績も悪くはないようですが、あっけらかんとした性格のためちょっと馬鹿っぽく見える言動とのギャップが素敵です。

大学の助教授をやっているためか少し堅苦しい父親の「舞田理一(まさかず)」。仕事を休んでは世界中を旅して回る奔放な叔母「舞田ふたば」。歳三の彼女?、東京でアナウンサーをやっている「野々島愛(ののしまあい)」。まわりを取り巻くサブキャラ達も魅力的です。

大人たちがあれこれと大人の事情的な話をしているなかで、ひとみの放り投げる言葉は異質な刺激をもたらします。ひとみと彼女を取り巻く世界のブラックボックス性が、本書の特徴といえるかもしれません。

連作短編ということで、各事件が微妙にリンクを見せる構成はなかなか私の好みです。それぞれの話が良く出てきていたため、最後のオチはそちらから来るのかとすっかり騙されました。読み応えは軽くてもぴりっと一味の、万人にお勧めできる作品です。

評価:★★★★☆

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