2010年10月24日日曜日

幻視時代(西澤保彦) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

今回は筆者にしては比較的ソフトな作品です。さくさく読めて全般的に手堅い印象で、仕掛け自体も個人的には悪くありません。ただ、思わせぶりな導入を考えると、解決編は若干変化球っぽい感じもします。



最後のほうで主人公たち3人が飲み屋で延々と解決編を行う構図は、タックとタカチのシリーズを彷彿とさせます。シリーズ物で愛着のあるキャラがやる分にはいいのですが、単発キャラだと少々くどい感じもあるかもしれません。

ただ、登場人物に魅力が無いわけではありません。ちょっと鬱屈の入った評論家「矢渡利悠人(やとりゆうと)」、矢渡利の後輩で巨漢作家の「生浦蔵之介(おうらくらのすけ)」、そして快活な女性編集者「長廻玲(ながさこあきら)」。

全員40前後の年齢となるため若い人にはしんどいかも知れませんが、彼らの掛け合いはなかなか味があって良いです。これがシリーズ作品だともっとすんなり楽しめたかもしれません。それにしても名前の難しさは相変わらずの西澤節です。

メインのネタについては悪くなかったと思います。ちょっぴりやりきれなさが残るあたりも、いかにも西澤さんらしい仕掛けです。ただ、写真の謎についてはちょっと肩透かし気味ですね。SFっぽい展開も期待していましたが、そういうのは全然無しです。

個人的には3人組が結構いい感じだったのでシリーズ化を期待したいところなのですが、本作の続きということになると設定的に少ししんどいかもしれませんね。

評価:★★☆☆☆

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