人気はあっても実績のないカエサルが、政治頭のないポンペイウスとお金しかないクラッススを騙くらかして三頭体制を樹立。それだけならただのお調子者ともとられかねませんが、その後のガリア遠征における知略・勇気・侠気をみせられると、誰も何も言えません。
それにしてもポンペイウス、奥さんをカエサルに寝取られながら、その寝取った本人の娘を新しく嫁にむかえるとは、昔はおおらかな時代だったのですね。政略的な意味があったとはいえ、カエサルの娘ユリアとは彼女が亡くなるまで幸せな結婚生活だったようで、いろんな人にとって幸運だったことでしょう。
西方のスペインや東方のシリアにポンペイウス、クラッススの両巨頭が赴いていることから、国境を接する周辺地域はいずれも重要度が高かったのだと思います。そんな中、なぜカエサルが特に北方ガリアにおける属州総督の地位を望んだのかがよくわからなかったのですが、まだ未開の地に手をつけることで名声を高めるためだったのですかね。
実際、ブリタニア(イギリス)遠征や、ガリアを越えてゲルマン民族にまで攻め入ったりと、ローマ人では未踏の偉業を次々と成し遂げ、さらには名文として名高いガリア戦記の刊行です。もちろん、公としての大志がなければ成し遂げられない難事業だったとは思いますが、人気取りとしても申し分なかったことでしょう。
ところで本書の端々でも引用されているガリア戦記
評価:★★★★☆
次巻:『ローマ人の物語〈10〉ユリウス・カエサル ルビコン以前(下)』(塩野七生)
関連レビュー:
『ローマ人の物語〈8〉ユリウス・カエサル ルビコン以前(上)』(塩野七生)
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