得がたい読書体験ではありましたが、続きがあったとしても読みたいという気が起きません。それは本書が不出来だからということではなく、むしろ全く逆なのです。
大人しくも芯の強い高校2年生「上田ひろみ」の一人称で語られています。ひょんなことから関わる生徒会活動。学校行事のたびに起こる悪質ないたずらの真相を探る、ちょっぴりミステリっぽい仕立てになっています。
「六番目の小夜子」なんかが近い雰囲気でしょうか。もっとも、ミステリっぽいといっても謎そのものの結末はそれほど凝ったものではありません。どちらかというと抒情で読ませるお話だと思います。
本書は「これは王国のかぎ」の続編なのだそうです。知らずに読みましたが、ストーリーを追う上では全く問題なかったように思います。ただ、ところどころで「おや?」と思う記述もあるので、可能なら順番に読んだほうがベターでしょう。
ヒロインの一人称が少々青臭さを感じさせるのですが、高校生達による青春小説ということを考えれば、普段ならさほど気にならないレベルです。このざらつくような違和感がどこからきたのか、読了後もいまだに良く分かっていません。
ひろみの価値観というか考え方に共感できなかったのは確かです。私は少女向けの小説やコミックも割と読むほうですが、文章の質以外の部分でここまで受け付けにくかったケースはあまり思い当たりません。
おそらく男性読者と女性読者では、ひろみの考え方、感じ方に対する受け止め方がかなり違ってくるのではないかと思います。私は筆者の勾玉シリーズもあまりあわなかったので、これはもう相性としか言いようがないのかもしれません。
本書ができの悪い小説であったのなら、これほど拒否反応は起きなかったと思います。なまじ物語としての質が素晴らしいために、一層突き刺さったような。万人向けとは思いませんが、傑作であることは間違いないと思います。
評価:★☆☆☆☆
2011年4月1日金曜日
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