前作が面白かったので、ハードカバーながら続編に手を出してみました。前回やや物足りなかった吹奏楽関係の比重が大きくなっていて良かったです。以下、各話の感想を。
「スプリングラフィ」
プロ志望のクラリネット奏者「芹澤直子(せりざわなおこ)」が登場します。その演奏力は部内トップクラスの「ハルタ」や「成島美代子」らを遥かに凌駕し、本来なら吹奏楽部など相手にされない存在のはずなのですが・・・。なかなか生々しいお話しです。ついでにツンデレ。
「周波数は77.4MHz」
カイユと7人の賢者によるラジオ放送に隠された秘密とは。そこに、校内10人の問題児の一人「麻生美里」率いる地学研究会の活動が意外な形で関係してきます。なかなか驚きの展開が待っていますが、印象的なエピソードが多い分、短編作品としては逆に輪郭がぼやけた印象も。打楽器奏者「檜山界雄」が登場します。
「アスモデウスの視線」
ちょっと変わった構成で、新メンバーは登場しません。部員に黙って普門館常連校のヘルプに行っていた草壁先生が過労で倒れてしまいます。文句を言おうと乗り込んだチカ達は驚きの事実を聞くことに。ハルタやチカが他校の教室で他校の制服を着ながら、「3回の席替え事件」の謎に挑みます。ミステリの提示と真相がすばらしく、本書で一番好きな話しです。
「初恋ソムリエ」
今回も新メンバーは登場せず。芹澤直子と同居予定の伯母が興信所に初恋の相手捜しを依頼したところ、「あなたの初恋の真贋を鑑定します」との手紙を受け取ります。差出人は「初恋ソムリエ」を名乗る3年生の朝霧亨、朝霧興信所の3代目でした。
初恋というのはたいがいにおいて過去の記憶だ。(略)しかもめいいっぱい美化される。(P214)などとのたまい、怪しげな理屈で鑑定を行うなんとも珍妙な話し。しかし、これが徐々にヘビーな話になってきます。そういえば前作も最終話は重かったですね。ちょっぴり切ない読後感を残すお話し。
面子も大分揃ってきて、そろそろメンバー的には落ち着いてきた感じでしょうか。今回はライバル校らしきものも登場し、今後の展開が俄然楽しみになってきました。しかし、結構ラブコメ成分が散りばめられている割に、主人公達の三角関係は進展のかけらもありませんね。まぁ、それはそれでとてもらしい展開だと思えるのが、「チカ」や「ハルタ」の
評価:★★★★☆
続巻:
空想オルガン(初野晴)
関連レビュー:
『退出ゲーム』(初野 晴)
0 件のコメント:
コメントを投稿