2010年8月31日火曜日

武士道シックスティーン(誉田哲也) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

漫画みたいな仕立て。雰囲気としては「ちはやふる」っぽい感じの、青春学園小説です。文章だけでこんな話しが成り立つのかと感心しました。



主人公の女子高生二人、交互の視点で話が進んでいきます。前節の相手方の言動が次節でどう受け取らているか、価値観のぶつかり合いがいかにも青春小説といった風情をかもし出しています。話がスピーディーに展開するのも良いですね。

主人公の片割れ、「磯山香織」は全中準優勝の実績をもつ剣道の達人。宮本武蔵の五輪書を愛読し、現代社会において兵法家としての志を実践する、よく言えば求道者、悪く言えば変人。まわりに浮きがちですが気にも留めない。そんな彼女なので、才能があるのにいまひとつ煮え切らない早苗に猛然と突っかかります。

主人公のもう片方、「西荻早苗」が剣道を始めたのは中学に入ってから。父親が会社を潰して離婚。家に余裕がなくなり日本舞踏を続けられなくなったため、代わりに始めたのが剣道です。その経験からか剣道においても独特の間を持ち、随所に才能をみせるものの、飄々とした平和主義者のため、勝利に対する欲を見せません。

価値観のあわない二人が互いの成長を通して友情を育んでいくのですが、それぞれの性格づけが実にうまく出来てますね。香織はクールな求道者。強くなることと強い相手と戦うこと意外には何の興味も見せないので、自然と周りからは浮いて友達もいません。そんな彼女がこだわったのが平和主義者の早苗でなければ、反発が醸成されるだけに終わったでしょう。

本書だけで言えば、ヒロインとしては香織の圧勝です。突き放したようなツンデレっぷりが最高のインパクトをかもし出しています。一方、早苗は煮え切らなさがちょっといらいらさせられますね。リアルでなら文句なくよい人のですが。ただ、早苗の性格は話が長く続くほど味が出てきそうですね。続巻では期待しています。

評価:★★★☆☆

続巻:
武士道セブンティーン(誉田哲也)

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