著者の逝去にともなうフェアを書店でやっていたので、よい機会だと思い手にとって見ました。読み進めるのがちょっと大変で、読了まで数日かかってしまいましたが、肝となるトリックが名作と呼ぶにふさわしい傑作です。
学生時代に読んでいたらすごい衝撃を受けたかもしれませんが、歳をとるにつれやわらかい方向へ趣向が傾いてきた私としては、文章や設定がちょっとお堅めに感じられました。直球過ぎるほどの直球勝負なので、SFファンにはたまらない作品ではないかと思います。
物語の発端は月で発見された5万年前の死体からとなります。進化論的に人類と同種としか考えられない存在の正体に迫りますが、その議論は紛糾します。次々に出てくる証拠を突き詰めるとどうしてもありえない矛盾にいきあたってしまうのです。それに対してどういう答えを出すのかというミステリ仕立てとなっています。
中盤あたりは難解というより退屈な展開が続いて、どのように収束するのか若干不安だったのですが、謎解きの部分は実に見事だったと思います。正直、謎の正体自体は割と予測の範疇だったのですが、それがどのように実現されたかの部分が愁眉でした。
私はどちらかというと物語としての完成度を重視しているので、個人的な評価としてはあまり高い得点をつけられないのですけれど、この作品がSF史に残る傑作だという点については、まったく異論がありません。
評価:★★☆☆☆
2010年8月11日水曜日
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