ティベリウスとの確執と和解。血にこだわりながらも才能ある直系に恵まれない悲哀。アウグストゥス編の最終巻です。
ティベリウスが拗ねてロードス島に引っ込んでしまう一大事。ローマはまだまだ紛争の火種を抱えているのに、これといって有能な指揮官が見当たりません。後継者育成失敗は、アウグストゥスの数少ない失敗のひとつですね。軍事面に暗いアウグストゥスにとって、右腕アグリッパの早世は痛すぎたことでしょう。
孫のガイウスとルシウスも遠征失敗の末に若くして死亡。娘のユリアはころころ親に結構相手を変えらるうち、なにやら色事の不始末をしでかし島流し。弱り目に祟り目のなか、ティベリウスとようやく和解することとなります。
ほぼ完璧な治世に成功したアウグストゥスですが、臨終間際に行ったゲルマニア遠征もあえなく失敗となり、必ずしも幸福な最後だったとはいえないのかもしれません。とはいえ、密かに推し進めていた帝政は後継者にティベリウスを得ることでほぼ完成。アウグストゥスが病弱だったにもかかわらず77歳まで生きのびたのは、友や孫たちに先立たれたために一人で責任を背負う立場になってしまったためかもしれません。
さて、次巻からは「悪名高き皇帝たち」です。その中にティベリウスも入っているのが不思議なんですよね。今までの書かれ方だととても有能な人物に見えたので。漫画「拳闘暗黒伝セスタス」の舞台となっている、ネロの時代もとても楽しみです。
評価:★★☆☆☆
関連レビュー:
『ローマ人の物語〈14〉パクス・ロマーナ(上)』(塩野七生)
『ローマ人の物語〈15〉パクス・ロマーナ(中)』(塩野七生)
2010年8月3日火曜日
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