前巻のやや淡白な印象が覆りました。商売として成立しにくい劇団や役者たちの実情が微細に描かれていますが、これだけ書き込んでもさっぱりリアリティが生まれない有川作品が大好きです。
今回はちょっとトリッキーな構成となっています。サブキャラに焦点を当てた短編4本に、次巻へ向けてのプロローグ的な位置づけと思われる2編を加えた全6話。プロローグといっても、本巻内だけで十分完結した話となっているので、お預け感はありません。
なにしろ10人もいる劇団員なので、前巻読了時には全般的にぼんやりと霞のかかった雰囲気を感じていました。今回、それぞれのサブキャラにスポットが当てられたことで、話の輪郭が随分クリアになったように思います。
劇団内部や辞めていったメンバー達とのドロドロした人間関係。やろうと思えばいくらでも文学的な方向へ突き進めそうなテーマですが、それを許さないのがエンターテイメントを愛する有川先生の真骨頂です。
なにしろ鉄血宰相が万能過ぎます。各メンバーからの相談に突き放すようでいながら、絶妙な形で救いの手を差し伸べるツンデレッぷり。ドロドロした人間模様があっさり吹き飛ばされていくのはとても嘘臭く、そして痛快です。
恋愛模様もいつものように予定調和的なものとなりそうですね。真の恋愛小説好きには物足りなさMaxかもしれませんが、私としては安心してクライマックスを迎えられそうで嬉しいところです。
傑作「ストーリー・セラー」から一転、いつもの有川節全開といった印象の本作品。次が最終巻になりそうとのことですが、このままなら実にきれいに収まってくれそうで、期待してお待ち申し上げます。
評価:★★★★☆
関連作品
2011年1月26日水曜日
2011年1月23日日曜日
高杉さん家のおべんとう 3(柳原望)
重いコイバナ展開はやだなーとおもっていた前巻ラストでしたが、とんだ杞憂だったようです。この筆者、残念な男子描くのがとても上手ですね。同属としてちょっと複雑(笑)。なにやら久留里出生の秘密など不穏な話も出てきつつ、あいかわらずほんわか展開の第3巻です。
いきなり恋敵(?)として登場した「丸宮元(まるみやはじめ)」君。強キャラかと思ってびくびくしていたら、単に空気読めない一直線キャラで安心しました。確かにわが身を省みても、女性一般と比べて男のエアリーディング(空気読み)スキルって低いような気がします。で、後になってから悶々と・・・嫌なこと思い出してしまった。
学会ネタなど相変わらずでしたが、とりわけ「元老院」というのはいかにもっぽくて受けました。そして、それを篭絡するセーラー服美少女。彼らが単純に嫌なやつらで終わらなかったのが良かったです。
今回はまた、際物のお弁当が多かった印象です。素麺ってお弁当になるんですね。私も機会があればやってみたいです。「ヘボ」の話は、流石に筆者が力を入れていたようなだけあって、本巻ベストのお話だったと思います。自分で食べたいとは思いませんでしたが・・・
本シリーズは単に料理自慢にとどまらない生活の知恵が溢れているのが好きですね。料理上手の小坂さんが常に一品おかずだったり、節子さんが力説する「なんとでもなる」の心得など。確かに毎日繰り返されるものであるからこそ、省労力の工夫がとても大事なのだと思います。
今回は久留里出生の秘密なども出てきましたが、結局ハルミがやったのは力技のごまかしでは?まあ、彼らしくて良かったですけれど。そもそも4親等はなれてるからOK的なスタンスの久留里には、あまり関係ない感じでしたね。しかし、これで本格的に高校生妻への流れが加速なのでしょうか・・・
あとがきによると、柳原さんの3巻越えは久しぶりとのことですが、いっそ正式に家庭を持って子供が生まれるまで延々と続けていただきたいところです。光源氏展開を現在進行形で見られる機会もなかなかないですし、大いに期待いたしております。
評価:★★★★☆
いきなり恋敵(?)として登場した「丸宮元(まるみやはじめ)」君。強キャラかと思ってびくびくしていたら、単に空気読めない一直線キャラで安心しました。確かにわが身を省みても、女性一般と比べて男のエアリーディング(空気読み)スキルって低いような気がします。で、後になってから悶々と・・・嫌なこと思い出してしまった。
学会ネタなど相変わらずでしたが、とりわけ「元老院」というのはいかにもっぽくて受けました。そして、それを篭絡するセーラー服美少女。彼らが単純に嫌なやつらで終わらなかったのが良かったです。
今回はまた、際物のお弁当が多かった印象です。素麺ってお弁当になるんですね。私も機会があればやってみたいです。「ヘボ」の話は、流石に筆者が力を入れていたようなだけあって、本巻ベストのお話だったと思います。自分で食べたいとは思いませんでしたが・・・
本シリーズは単に料理自慢にとどまらない生活の知恵が溢れているのが好きですね。料理上手の小坂さんが常に一品おかずだったり、節子さんが力説する「なんとでもなる」の心得など。確かに毎日繰り返されるものであるからこそ、省労力の工夫がとても大事なのだと思います。
今回は久留里出生の秘密なども出てきましたが、結局ハルミがやったのは力技のごまかしでは?まあ、彼らしくて良かったですけれど。そもそも4親等はなれてるからOK的なスタンスの久留里には、あまり関係ない感じでしたね。しかし、これで本格的に高校生妻への流れが加速なのでしょうか・・・
あとがきによると、柳原さんの3巻越えは久しぶりとのことですが、いっそ正式に家庭を持って子供が生まれるまで延々と続けていただきたいところです。光源氏展開を現在進行形で見られる機会もなかなかないですし、大いに期待いたしております。
評価:★★★★☆
2011年1月22日土曜日
ゴルフ場殺人事件(アガサ・クリスティー)
ポアロシリーズ長編2作目。野暮ったい邦題タイトルのわりには真っ当な印象のお話です。ライバル刑事や謎の美女登場などの緩急ある展開に加え、肝心の謎解きもなかなかお見事。それにしてもヘイスティングズ・・・(^^;
「ゴルフ場殺人事件」とありますが、特にゴルフ場ならではの趣向があるわけではありません。単にゴルフ場で殺されただけ。もっとも自宅のゴルフ場ということで、金持ちの象徴というのはあるかもしれませんが。ゴルフクラブがどうとかキャディがどうとかが全くなかったのには、なんとなく安心しました。
ヘイスティングズは前作につづき、またしても見事な道化っぷりをみせてくれます。なんだか彼がやらかすと全部持っていってしまうので、ちょっと難しいキャラだなという印象がありますが、前回よりは色々な意味で救いのある感じだったのが良かったです。
一応ライバル刑事「ジロー」が登場しますが、途中はともかく終盤がちょっとあっけなさ過ぎる気はしました。散々やり込められる結果となった場面を、さらっと流さずもっと見てみたかった気がします。
ヘイスティングズといいジローといい、なんとも典型的というかお約束なキャラなので、その点は好みが分かれそうなところかもしれません。ただ、本作は謎解きそのものもかなり秀逸ですし、なにより17歳の美少女「シンデレラ」の登場タイミングが実に絶妙です。
ちょっと興味がでたので調べてみましたが、ヘイスティングズって知名度の割りにそれほど多くの作品に登場しているわけではないのですね。評価の高い有名作でいうと「ABC殺人事件」くらいでしょうか。
それはそうだろうなーという気がします。彼のやらかしっぷりは、純粋なミステリの観点からいくと若干反則気味なところがあうように思えるのです。それはやっちゃ駄目だろという線を平気で超えてしまう(笑)。ゴシップ的ドタバタも妙にクローズアップされすぎてしまいますし。
そういう意味で、本書の評価はヘイスティングズの存在を許容できるか否かにかかっているように思うのですけれど、前作「スタイルズ荘の怪事件」と比べれば、素直に楽しめたように思います。シリーズものとしては美味しいキャラですよね。
でも、ラストでは色々な展開もあったことだし、彼の行動パターンも少しは変わってくるのでしょうか。次回以降の登場がとても楽しみになってきました。
評価:★★★☆☆
「ゴルフ場殺人事件」とありますが、特にゴルフ場ならではの趣向があるわけではありません。単にゴルフ場で殺されただけ。もっとも自宅のゴルフ場ということで、金持ちの象徴というのはあるかもしれませんが。ゴルフクラブがどうとかキャディがどうとかが全くなかったのには、なんとなく安心しました。
ヘイスティングズは前作につづき、またしても見事な道化っぷりをみせてくれます。なんだか彼がやらかすと全部持っていってしまうので、ちょっと難しいキャラだなという印象がありますが、前回よりは色々な意味で救いのある感じだったのが良かったです。
一応ライバル刑事「ジロー」が登場しますが、途中はともかく終盤がちょっとあっけなさ過ぎる気はしました。散々やり込められる結果となった場面を、さらっと流さずもっと見てみたかった気がします。
ヘイスティングズといいジローといい、なんとも典型的というかお約束なキャラなので、その点は好みが分かれそうなところかもしれません。ただ、本作は謎解きそのものもかなり秀逸ですし、なにより17歳の美少女「シンデレラ」の登場タイミングが実に絶妙です。
ちょっと興味がでたので調べてみましたが、ヘイスティングズって知名度の割りにそれほど多くの作品に登場しているわけではないのですね。評価の高い有名作でいうと「ABC殺人事件」くらいでしょうか。
それはそうだろうなーという気がします。彼のやらかしっぷりは、純粋なミステリの観点からいくと若干反則気味なところがあうように思えるのです。それはやっちゃ駄目だろという線を平気で超えてしまう(笑)。ゴシップ的ドタバタも妙にクローズアップされすぎてしまいますし。
そういう意味で、本書の評価はヘイスティングズの存在を許容できるか否かにかかっているように思うのですけれど、前作「スタイルズ荘の怪事件」と比べれば、素直に楽しめたように思います。シリーズものとしては美味しいキャラですよね。
でも、ラストでは色々な展開もあったことだし、彼の行動パターンも少しは変わってくるのでしょうか。次回以降の登場がとても楽しみになってきました。
評価:★★★☆☆
2011年1月20日木曜日
とある飛空士への恋歌 5(犬村小六)
話の展開的にどう落とすのかと思っていましたが、見事な収束でした。筆者はカタルシスというもののツボを知り尽くしてますね。序盤早々から涙腺ゆるみ気味になってしまいました。
クライマックスとして見た場合、「追憶」のわかりやすい決戦と比べて、若干変化球気味なところはあるかもしれません。その点では物足りなさも感じなくはないですが、達成感というか納得感の演出については文句なしだったと思います。
立派に成長したカルエルが、それでもヘタレ入ったままなのは良かったです。完璧超人なんて彼の柄じゃありません。ただ、せっかく飛空士として成長した割りには、本巻ではそちら方面の活躍が控えめだったのが残念といえば残念。
本シリーズでは三角関係も主要な軸の一つだったかと思いますが、それがあまりドロドロしたものにならなかったのも良かったです。特にアリエルは最後までいかにも彼女らしくて、その心根には胸を打たれます。人気投票があれば文句なくNo1でしょうねー。
長期間の遠征帰りということで、帰還の演出は「指輪物語」を髣髴とさせます。文庫で全5巻というのは、長いとも短いともいえない微妙な長さですが、ライトノベルとしてみれば絶妙のバランスだったといえるかもしれません。
後書きがありませんでしたけど、また続きは出るんでしょうか。世界観の概要はわかりましたが、正直なところこのままでは「だから何?」というものでしかありません。色々含みも残っているようなので、続編には是非期待したいです。今度はどのような空戦が待っているのか、今から楽しみです。
評価:★★★★☆
クライマックスとして見た場合、「追憶」のわかりやすい決戦と比べて、若干変化球気味なところはあるかもしれません。その点では物足りなさも感じなくはないですが、達成感というか納得感の演出については文句なしだったと思います。
立派に成長したカルエルが、それでもヘタレ入ったままなのは良かったです。完璧超人なんて彼の柄じゃありません。ただ、せっかく飛空士として成長した割りには、本巻ではそちら方面の活躍が控えめだったのが残念といえば残念。
本シリーズでは三角関係も主要な軸の一つだったかと思いますが、それがあまりドロドロしたものにならなかったのも良かったです。特にアリエルは最後までいかにも彼女らしくて、その心根には胸を打たれます。人気投票があれば文句なくNo1でしょうねー。
長期間の遠征帰りということで、帰還の演出は「指輪物語」を髣髴とさせます。文庫で全5巻というのは、長いとも短いともいえない微妙な長さですが、ライトノベルとしてみれば絶妙のバランスだったといえるかもしれません。
後書きがありませんでしたけど、また続きは出るんでしょうか。世界観の概要はわかりましたが、正直なところこのままでは「だから何?」というものでしかありません。色々含みも残っているようなので、続編には是非期待したいです。今度はどのような空戦が待っているのか、今から楽しみです。
評価:★★★★☆
2011年1月18日火曜日
コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則(フィリップ・コトラー 他)
「ソーシャル・メディア」と「コトラー」につられて買ってしまいましたが、この本は名義貸しですね。実質インドネシア人マーケター二人の手からなる著作です。新興国視点の事例紹介はそれなりに面白かったですが、論旨自体の新鮮味はあまり感じられませんでした。
本書のもっとも基本的な主張は、マーケティングの軸足が企業と顧客の関係(2.0)から顧客同士のソーシャルな関係(3.0)へ移行するということ。ちなみにマーケティング1.0は製品中心の考え方だそうです。
いまどき2.0とか3.0とか陳腐感がなくもないですが、そのコンセプト自体については特に異論があるわけではありません。ただ、マーケティング3.0における具体的な指針については、あまり面白くなくて読み進めるのがしんどかったです。
協働的、文化的、精神的なマーケティング手法が大事で、価値主導のなんとかかんとか。うーん、この辺り確かにその通りだとは思うのですけれど、どこかで聞いたような話を寄せ集めただけのような印象がとても強いです。頷けども感銘は受けません。
この手の経営関連書について、私の場合難しいロジックは良く分からない分、とりわけ事例紹介は楽しみにしています。ソーシャルを題材にということでもっとITよりな話かと期待していたのですが、早合点した私も悪かったかもしれません。
新興市場におけるソーシャル・マーケティングの事例や考え方などは本書のユニークな点だと思います。ただ、これは全く執筆者に非のないところですが、ちょっと前に読んだ大前研一さんの本に同じようなことが書かれていたため、私としてはあまり楽しめませんでした。
本書が私にあわなかったのは、単に私が本書のターゲットから外れていたためだと思います。適切な対象に対してはとても有意義に感じられるのではないかという気もします。ただ、コトラーを前面に押し出した推薦文や宣伝手法については、ちょっとだまされた感が強くて印象悪いですね。
評価:★☆☆☆☆
本書のもっとも基本的な主張は、マーケティングの軸足が企業と顧客の関係(2.0)から顧客同士のソーシャルな関係(3.0)へ移行するということ。ちなみにマーケティング1.0は製品中心の考え方だそうです。
いまどき2.0とか3.0とか陳腐感がなくもないですが、そのコンセプト自体については特に異論があるわけではありません。ただ、マーケティング3.0における具体的な指針については、あまり面白くなくて読み進めるのがしんどかったです。
協働的、文化的、精神的なマーケティング手法が大事で、価値主導のなんとかかんとか。うーん、この辺り確かにその通りだとは思うのですけれど、どこかで聞いたような話を寄せ集めただけのような印象がとても強いです。頷けども感銘は受けません。
この手の経営関連書について、私の場合難しいロジックは良く分からない分、とりわけ事例紹介は楽しみにしています。ソーシャルを題材にということでもっとITよりな話かと期待していたのですが、早合点した私も悪かったかもしれません。
新興市場におけるソーシャル・マーケティングの事例や考え方などは本書のユニークな点だと思います。ただ、これは全く執筆者に非のないところですが、ちょっと前に読んだ大前研一さんの本に同じようなことが書かれていたため、私としてはあまり楽しめませんでした。
本書が私にあわなかったのは、単に私が本書のターゲットから外れていたためだと思います。適切な対象に対してはとても有意義に感じられるのではないかという気もします。ただ、コトラーを前面に押し出した推薦文や宣伝手法については、ちょっとだまされた感が強くて印象悪いですね。
評価:★☆☆☆☆
2011年1月16日日曜日
ゴーストハント2 人形の檻(小野不由美)
徐々にホラー色が増してきてます。前巻では空気気味だった4人の霊能者達もしっかり活躍(一人除く)。ただ、まだ麻衣があまり活躍していません。本格的に面白くなっていくのはもう少し先です。1巻のレビューはこちらから。
旧版が手元にないのではっきりとは確認できませんが、改稿はかなり大幅に入っている印象です。特に事件の背景に関わるディテールがかなり細かくなっているように思えます。結構怖いです。
ぼーさん、ジョン、真砂子の3人はきっちり存在感を示しました。前回は事件の性質上活躍の機会のないまま終わってしまいましたが、いよいよ本領発揮です。
一人取り残された綾子ですが、役立たずは彼女のアイデンティティですから仕方ありません。20台半ばの巫女さんというキャラ的に、この扱いは必然なのかもしれません。しかし、彼女がいずれ活躍するときがやってきます。それはもう痛快なので、それまで温かく見守ってあげてください。
エンディングもかなり改稿されてますね。ナルを真砂子に取られてやけっぱちになった4人が互いにデートに行くはずでしたが、甘いもの食べながらのほんわか打ち上げに変わっています。色恋沙汰控えめなのがこの物語の特徴なので、確かにこの方がしっくりきます。
このゴーストハントいうシリーズ、2巻までだとあまり目立たないのですが、実は麻衣の成長ストーリーなのですね。本巻でも片鱗は見せていますが、彼女が力をつけるに連れて物語もどんどん面白くなっていきます。とにかくまだ見切りをつけずに、彼女の成長と綾子の活躍まで是非お待ちください。
評価:★★★☆☆
旧版が手元にないのではっきりとは確認できませんが、改稿はかなり大幅に入っている印象です。特に事件の背景に関わるディテールがかなり細かくなっているように思えます。結構怖いです。
ぼーさん、ジョン、真砂子の3人はきっちり存在感を示しました。前回は事件の性質上活躍の機会のないまま終わってしまいましたが、いよいよ本領発揮です。
一人取り残された綾子ですが、役立たずは彼女のアイデンティティですから仕方ありません。20台半ばの巫女さんというキャラ的に、この扱いは必然なのかもしれません。しかし、彼女がいずれ活躍するときがやってきます。それはもう痛快なので、それまで温かく見守ってあげてください。
エンディングもかなり改稿されてますね。ナルを真砂子に取られてやけっぱちになった4人が互いにデートに行くはずでしたが、甘いもの食べながらのほんわか打ち上げに変わっています。色恋沙汰控えめなのがこの物語の特徴なので、確かにこの方がしっくりきます。
このゴーストハントいうシリーズ、2巻までだとあまり目立たないのですが、実は麻衣の成長ストーリーなのですね。本巻でも片鱗は見せていますが、彼女が力をつけるに連れて物語もどんどん面白くなっていきます。とにかくまだ見切りをつけずに、彼女の成長と綾子の活躍まで是非お待ちください。
評価:★★★☆☆
2011年1月13日木曜日
ローマ人の物語〈34〉迷走する帝国〈下〉(塩野七生)
皇帝ヴァレリアヌスがペルシアに囚われる異常事態を迎え、帝国に激震が走ります。東方とガリアで反乱が起こり、ゴート族は帝国内部まで深く進入。まさに未曾有の危機ですが、実力のある軍人皇帝たちにより徐々に安定を見せます。しかし、内側では着々とローマの変質が始まっていたのでした。
本巻冒頭を見る限りもう終わってもおかしくないような混乱振りですが、やはり囚われの身とはなったものの、実力派の先帝ヴァレリアヌスの薫陶が生きていたためでしょうか。次々と優秀な軍人皇帝が立ち、危機を克服していきます。
「優秀」なのになぜ帝位が次々と変わっていったのか。病死や天災に見舞われた例もありますが、基本的には皇帝の権威凋落が根本的な原因だったのではないかとの説が述べられています。
実力を認められ推挙されたものの元は同僚。嫉妬を乗り越えるには、例えばわが国で言うと天皇陛下のような、理屈では補えない威光が不足していたのではないかというのが筆者の見解です。落ち度が無いにもかかわらず、次々と味方に寝首をかかれていきます。
もっとも非常事態なだけに、推薦されたのは優れた人材ばかり。とりわけ皇帝アウレリアヌスは、東へ西へと奔走し、神速で事態を収拾していきます。一度の解決は無理と見て優先順位をつけてクリアしていく手法は、現代のマネージャ達にも参考とすべき点が多そうです。
こうして辺境からの危機自体は収まっていくものの、この過程で起きたローマの変質に筆者は目を向けます。注目されているのは2点。ひとつはカラカラ帝によりローマ市民権が万人に与えられるようになったこと。もう一つは元老院と軍の完全分離です。
ローマ市民権の問題については前々巻におけるレビューでも触れました。本国、属州の区別なく全員にローマ市民権が与えられるようになったことで、ローマ市民権の価値が急落します。「飴と鞭」の飴が機能しなくなったわけです。
加えてガリエヌス帝による元老院と軍の分離。凋落傾向にあるとは言え、元老院はローマ帝国において人材をプールする機能を果たしてきました。エリートに軍事を経験させることによる、指導者としてのキャリア育成の道が立たれてしまうことで、政治と軍事にバランスよい、いわば「ローマ的」な性質が受け継がれなくなっていったのでした。
このローマの変質にキリスト教台頭の原因を求める、本書第三章のロジックは、実に整然として感動的です。確かに、世相が不安になると強固な協議を持つ宗教に頼る人が増えるのは、感覚的にも理解できることです。次回、治世20年の強い皇帝「ディオクレティアヌス」のもと、ローマ社会がどのような変換点を迎えることになるのか。とても興味深いです。
評価:★★★★★
本巻冒頭を見る限りもう終わってもおかしくないような混乱振りですが、やはり囚われの身とはなったものの、実力派の先帝ヴァレリアヌスの薫陶が生きていたためでしょうか。次々と優秀な軍人皇帝が立ち、危機を克服していきます。
「優秀」なのになぜ帝位が次々と変わっていったのか。病死や天災に見舞われた例もありますが、基本的には皇帝の権威凋落が根本的な原因だったのではないかとの説が述べられています。
実力を認められ推挙されたものの元は同僚。嫉妬を乗り越えるには、例えばわが国で言うと天皇陛下のような、理屈では補えない威光が不足していたのではないかというのが筆者の見解です。落ち度が無いにもかかわらず、次々と味方に寝首をかかれていきます。
もっとも非常事態なだけに、推薦されたのは優れた人材ばかり。とりわけ皇帝アウレリアヌスは、東へ西へと奔走し、神速で事態を収拾していきます。一度の解決は無理と見て優先順位をつけてクリアしていく手法は、現代のマネージャ達にも参考とすべき点が多そうです。
こうして辺境からの危機自体は収まっていくものの、この過程で起きたローマの変質に筆者は目を向けます。注目されているのは2点。ひとつはカラカラ帝によりローマ市民権が万人に与えられるようになったこと。もう一つは元老院と軍の完全分離です。
ローマ市民権の問題については前々巻におけるレビューでも触れました。本国、属州の区別なく全員にローマ市民権が与えられるようになったことで、ローマ市民権の価値が急落します。「飴と鞭」の飴が機能しなくなったわけです。
加えてガリエヌス帝による元老院と軍の分離。凋落傾向にあるとは言え、元老院はローマ帝国において人材をプールする機能を果たしてきました。エリートに軍事を経験させることによる、指導者としてのキャリア育成の道が立たれてしまうことで、政治と軍事にバランスよい、いわば「ローマ的」な性質が受け継がれなくなっていったのでした。
このローマの変質にキリスト教台頭の原因を求める、本書第三章のロジックは、実に整然として感動的です。確かに、世相が不安になると強固な協議を持つ宗教に頼る人が増えるのは、感覚的にも理解できることです。次回、治世20年の強い皇帝「ディオクレティアヌス」のもと、ローマ社会がどのような変換点を迎えることになるのか。とても興味深いです。
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