2011年1月22日土曜日

ゴルフ場殺人事件(アガサ・クリスティー) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

ポアロシリーズ長編2作目。野暮ったい邦題タイトルのわりには真っ当な印象のお話です。ライバル刑事や謎の美女登場などの緩急ある展開に加え、肝心の謎解きもなかなかお見事。それにしてもヘイスティングズ・・・(^^;



「ゴルフ場殺人事件」とありますが、特にゴルフ場ならではの趣向があるわけではありません。単にゴルフ場で殺されただけ。もっとも自宅のゴルフ場ということで、金持ちの象徴というのはあるかもしれませんが。ゴルフクラブがどうとかキャディがどうとかが全くなかったのには、なんとなく安心しました。

ヘイスティングズは前作につづき、またしても見事な道化っぷりをみせてくれます。なんだか彼がやらかすと全部持っていってしまうので、ちょっと難しいキャラだなという印象がありますが、前回よりは色々な意味で救いのある感じだったのが良かったです。

一応ライバル刑事「ジロー」が登場しますが、途中はともかく終盤がちょっとあっけなさ過ぎる気はしました。散々やり込められる結果となった場面を、さらっと流さずもっと見てみたかった気がします。

ヘイスティングズといいジローといい、なんとも典型的というかお約束なキャラなので、その点は好みが分かれそうなところかもしれません。ただ、本作は謎解きそのものもかなり秀逸ですし、なにより17歳の美少女「シンデレラ」の登場タイミングが実に絶妙です。

ちょっと興味がでたので調べてみましたが、ヘイスティングズって知名度の割りにそれほど多くの作品に登場しているわけではないのですね。評価の高い有名作でいうと「ABC殺人事件」くらいでしょうか。

それはそうだろうなーという気がします。彼のやらかしっぷりは、純粋なミステリの観点からいくと若干反則気味なところがあうように思えるのです。それはやっちゃ駄目だろという線を平気で超えてしまう(笑)。ゴシップ的ドタバタも妙にクローズアップされすぎてしまいますし。

そういう意味で、本書の評価はヘイスティングズの存在を許容できるか否かにかかっているように思うのですけれど、前作「スタイルズ荘の怪事件」と比べれば、素直に楽しめたように思います。シリーズものとしては美味しいキャラですよね。

でも、ラストでは色々な展開もあったことだし、彼の行動パターンも少しは変わってくるのでしょうか。次回以降の登場がとても楽しみになってきました。

評価:★★★☆☆

0 件のコメント:

コメントを投稿