警察を退職後、作家に転身した「大道寺圭」が遭遇した5つの事件についての連作短篇。同時に語られる「大道寺圭最後の事件」が、現在と過去を微妙にリンクさせる技ありな作りとなっています。
「死んでも治らない」は大道寺圭初著作のタイトル。実際にあったマヌケな犯罪者たちについてつづられているそうな。「治らない」のは「馬鹿」のこと。かといって、本作がまったくおマヌケなテイストかというと、そうでもありません。
詳細はネタバレになるので避けますが、結構ブラックです。ブラックといっても、表現がグロいとかでなく機知に富んだ黒さなので、ホラー嫌いな方でもそれほど抵抗は感じさせないかと思います。
主人公の大道寺圭がなかなか格好いいです。裏書きにてコージ・ハードボイルドと評されるのもなるほどです。もう少し女性の影があってもいいかと思っていましたが、これも伏線だったのかなと読了後に思いました。考えすぎな気もしますが。
若竹七海氏のコージーミステリが好きで、葉崎市シリーズは大体読んでいまが、氏のもう一つの持ち味であるブラックなテイストについても結構いけそうな気がしてきました。
評価:★★★☆☆
2010年6月14日月曜日
2010年6月13日日曜日
『テルマエ・ロマエ1』(ヤマザキマリ)
古代ローマの設計技師が、現代の日本にタイプスリップして風呂の技術を学ぶ話し。これだけじゃ何のことだか分からないと思いますが、あまり深く考えたら負けです。もやしもん
以来の面白さ。マンガ大賞2010受賞作品。
とにかく主人公ルシウスの生真面目さがおかしいです。日本の銭湯文化に栄えあるローマ帝国民としてのプライドを打ち砕かれる様が実にかわいらしい。ローマ人の風俗的に、すぐ裸でうろうろしようとして周りをあわてさせるのもいとおかしです。
脇キャラもいい味出してますね。親友の彫刻家マルクス、お調子ものっぷりが話しを転がす上でいい感じです。ハドリアヌス皇帝、威厳があって言動も立派なのに、ところどころでホモっぽい。ルシウスを狙ってるんですかね?今回は登場しないままに離縁状突きつけた奥さんのリウィア、次巻では登場してくれるのでしょうか。
とても面白かったけど、今回だけで銭湯、露天風呂、狭い自宅風呂、展示場、湯治場とでてきましたが、これ以上ネタが続くんですかね?あとはサウナくらいしか思い浮かびませんが。そのあたりも期待したいです。
評価:★★★★☆
関連レビュー:
テルマエ・ロマエ2(ヤマザキマリ)
とにかく主人公ルシウスの生真面目さがおかしいです。日本の銭湯文化に栄えあるローマ帝国民としてのプライドを打ち砕かれる様が実にかわいらしい。ローマ人の風俗的に、すぐ裸でうろうろしようとして周りをあわてさせるのもいとおかしです。
脇キャラもいい味出してますね。親友の彫刻家マルクス、お調子ものっぷりが話しを転がす上でいい感じです。ハドリアヌス皇帝、威厳があって言動も立派なのに、ところどころでホモっぽい。ルシウスを狙ってるんですかね?今回は登場しないままに離縁状突きつけた奥さんのリウィア、次巻では登場してくれるのでしょうか。
とても面白かったけど、今回だけで銭湯、露天風呂、狭い自宅風呂、展示場、湯治場とでてきましたが、これ以上ネタが続くんですかね?あとはサウナくらいしか思い浮かびませんが。そのあたりも期待したいです。
評価:★★★★☆
関連レビュー:
テルマエ・ロマエ2(ヤマザキマリ)
2010年6月12日土曜日
「超訳『資本論』 」(的場 昭弘)
学生時代を思い出しながら読みました。「超訳」の意味は良く分かりませんが、副読本的な位置づけになるんですかね。そんなにやさしい本ではないと思います。
資本論第1巻のうち理論重視の前半でなく、現実世界に近い後半部分を主に厚く記述しているそうです。章立てそのものが原本に即しているのかと思って調べてみたら、そうでもなかったですね。
資本論をもっとやさしく解説している本はたくさんあると思います。そういう意味ではどちらかというと本物を読むための準備運動的な作品なんですかね。学生さん向きでしょうか。総括的な記述があまりないので、初心者にはかなり読みにくい本です。
社会人が気軽に手を出すというより、これから真面目に勉強しようという人のための本だと思います。読み物としては全然面白くなく、知的好奇心を刺激されるということもあまり期待しないほうがいいと思います。
評価:★★☆☆☆
資本論第1巻のうち理論重視の前半でなく、現実世界に近い後半部分を主に厚く記述しているそうです。章立てそのものが原本に即しているのかと思って調べてみたら、そうでもなかったですね。
資本論をもっとやさしく解説している本はたくさんあると思います。そういう意味ではどちらかというと本物を読むための準備運動的な作品なんですかね。学生さん向きでしょうか。総括的な記述があまりないので、初心者にはかなり読みにくい本です。
社会人が気軽に手を出すというより、これから真面目に勉強しようという人のための本だと思います。読み物としては全然面白くなく、知的好奇心を刺激されるということもあまり期待しないほうがいいと思います。
評価:★★☆☆☆
2010年6月11日金曜日
『万能鑑定士Qの事件簿3』(松岡 圭祐)
かつては時代を築いた音楽プロデューサ「西園寺響」による音声詐欺のおはなし。ていうか、それ○室さんですから(笑)。どう考えてもトリックは無理がありそうに思うのですが、ユニークなんで私的には全然ありでした。
莉子のスーパー鑑定士っぷりが相変わらず光ります。今回は過去話もない分、純粋に事件を楽しめました。収束も良かったのではないでしょうか。小笠原くんは相変わらず空気です。
詐欺の仕掛けは・・・まぁ、ちょっと無理があるかなと。ショップのBGMはともかく、学校の教師がそんなに簡単に無料サイトを試験のネタにしますかね。それに、あのサイトの内容だと結構作り込みに手間がかかりそうなので、いくら悪事で儲けようとしても、そんなに簡単に元がとれるのかなという気もします。ただ、音を利用した仕掛け自体は斬新で面白かったです。
次巻は催眠
の「嵯峨敏也」が登場とのことなのですが、未読なんですよね。予習しておくべきかどうか。
評価:★★★☆☆
次巻:
『万能鑑定士Qの事件簿4』(松岡圭祐)
関連レビュー:
『万能鑑定士Qの事件簿1』(松岡 圭祐)
『万能鑑定士Qの事件簿2』(松岡 圭祐)
莉子のスーパー鑑定士っぷりが相変わらず光ります。今回は過去話もない分、純粋に事件を楽しめました。収束も良かったのではないでしょうか。小笠原くんは相変わらず空気です。
詐欺の仕掛けは・・・まぁ、ちょっと無理があるかなと。ショップのBGMはともかく、学校の教師がそんなに簡単に無料サイトを試験のネタにしますかね。それに、あのサイトの内容だと結構作り込みに手間がかかりそうなので、いくら悪事で儲けようとしても、そんなに簡単に元がとれるのかなという気もします。ただ、音を利用した仕掛け自体は斬新で面白かったです。
次巻は催眠
評価:★★★☆☆
次巻:
『万能鑑定士Qの事件簿4』(松岡圭祐)
関連レビュー:
『万能鑑定士Qの事件簿1』(松岡 圭祐)
『万能鑑定士Qの事件簿2』(松岡 圭祐)
2010年6月10日木曜日
『ブレイクスルー・トライアル』(伊園 旬)
セキュリティアピールのためのIT研究所潜入公募イベント。参加者達の思惑が複雑に絡む中、自体は思わぬ方向へ動き出す。・・・後から読み返しても設定もパーツもよくできているし、オチに関しても結構技ありといっていい出来だし、なぜ楽しめなかったのか不思議な作品。
期待値が大きすぎたのがいけなかったのかもしれません。IT要塞のセキュリティ突破とか、燃えるシチュエーションなのですが。
どうも、主人公達にいまひとつ感情移入できなかったのが原因なのでしょうか。強面の堅物とちょっと砕けた優男というのはいいのですが、今ひとつ人間的な魅力にかけた印象。他のチームとの兼ね合いも考えて作者が意識的にそういうキャラクターにしたのかもしれません。
作品の雰囲気としては伊坂幸太郎の陽気なギャングが地球を回す
なんかが近いかもしれません。それだけに、ハマる人にはすごく楽しめそうな気もします。
評価:★☆☆☆☆
期待値が大きすぎたのがいけなかったのかもしれません。IT要塞のセキュリティ突破とか、燃えるシチュエーションなのですが。
どうも、主人公達にいまひとつ感情移入できなかったのが原因なのでしょうか。強面の堅物とちょっと砕けた優男というのはいいのですが、今ひとつ人間的な魅力にかけた印象。他のチームとの兼ね合いも考えて作者が意識的にそういうキャラクターにしたのかもしれません。
作品の雰囲気としては伊坂幸太郎の陽気なギャングが地球を回す
評価:★☆☆☆☆
2010年6月9日水曜日
『ローマ人の物語 (5) - ハンニバル戦記(下)』(塩野七生)
待ちきれずに、前日に続いて一気に読んでしまいました。歴史上最高といって過言でない、二人の天才戦術家による頂上決戦。いよいよローマvsカルタゴの決着です。そして、その後のローマによる地中海世界制覇についても触れられています。ローマのやり方を覇道とみなさない筆者の視点が面白いです。
後代の人間から見たザマの会戦の何よりの価値は、筆者が
お互いの状況は必ずしも公平とはいえなかったようです。本国を急襲されて、あわてて呼び戻されたハンニバル。兵数では勝るものの騎兵を十分に揃えられなかったことが敗因となります。ローマ内においてさえ会戦後もハンニバルをスキピオの上と置く見解があったのも、そのためなのでしょう。
とはいえ、スキピオ以外の誰かであれば到底ハンニバル越えが不可能であったことは間違いありません。散々負け続けたローマに対して、ハンニバルはこれが小競り合い以外で初の敗北。しかし、この唯一の敗北により第2次ポエニ戦役は決着を迎えます。ローマの強固な政体の勝利といえるでしょう。
二人のその後についても触れられています。スキピオは異例の若さで元老院主席となり、長年にわたりローマ最大の発言力を持ち続けることとなります。一方のハンニバル、教科書からの印象でザマの決戦で散ったのかと思っていましたが、その後も結構長生きしたそうです。政争でカルタゴを追い出されたものの外国に客将として招かれ、ときにはローマと再び戦う機会もあったそうです。とはいえ、晩年は不遇といっていい状況だったみたいですね。
第2次ポエニ戦役終了後、ローマは完全に地中海世界の覇者となりますが、その要因のひとつがハンニバルとの戦争にあったようです。
さて、ローマが勝って地中海を制覇してハッピーエンドとしたいところですが、次巻は「勝者の混迷」などという剣呑なタイトルがつけられています。暗い話になりそうですね。本巻の後なだけにちょっと手をつけかねる気がしなくも無いですが、カエサルが待っているので頑張ってクリアしましょう。
評価:★★★★★
関連レビュー:
『ローマ人の物語 (3) - ハンニバル戦記(上)』(塩野七生)
『ローマ人の物語 (4) - ハンニバル戦記(中)』(塩野七生)
後代の人間から見たザマの会戦の何よりの価値は、筆者が
ハンニバルとスキピオは、古代の名将五人をあげるとすれば、必ず入る二人である。(P62)というように、希代の戦術家同士が直接矛を交えるという、フィクションでしかありえないような状況だったことにあります。本人たちもそれを意識していたのか、決戦を前に二人は異例の会談を持ち、言葉を交わす機会を得ます。
お互いの状況は必ずしも公平とはいえなかったようです。本国を急襲されて、あわてて呼び戻されたハンニバル。兵数では勝るものの騎兵を十分に揃えられなかったことが敗因となります。ローマ内においてさえ会戦後もハンニバルをスキピオの上と置く見解があったのも、そのためなのでしょう。
とはいえ、スキピオ以外の誰かであれば到底ハンニバル越えが不可能であったことは間違いありません。散々負け続けたローマに対して、ハンニバルはこれが小競り合い以外で初の敗北。しかし、この唯一の敗北により第2次ポエニ戦役は決着を迎えます。ローマの強固な政体の勝利といえるでしょう。
二人のその後についても触れられています。スキピオは異例の若さで元老院主席となり、長年にわたりローマ最大の発言力を持ち続けることとなります。一方のハンニバル、教科書からの印象でザマの決戦で散ったのかと思っていましたが、その後も結構長生きしたそうです。政争でカルタゴを追い出されたものの外国に客将として招かれ、ときにはローマと再び戦う機会もあったそうです。とはいえ、晩年は不遇といっていい状況だったみたいですね。
第2次ポエニ戦役終了後、ローマは完全に地中海世界の覇者となりますが、その要因のひとつがハンニバルとの戦争にあったようです。
ローマは、カルタゴに対して戦い抜いたことによって、効率が良く精巧無比な戦争機械にも似た、軍隊を持つ国に変貌した。(P160)ぬるい争いを繰り返すギリシャやマケドニアなどの東地中海勢力は、もはやローマの敵ではありませんでした。しかし、傍目には覇道とみえるローマの所業も、やむを得ぬ事情と偶然のいたずらによる産物だったと見る筆者の見解は、いかにもローマ好きだなぁという感じがします。
さて、ローマが勝って地中海を制覇してハッピーエンドとしたいところですが、次巻は「勝者の混迷」などという剣呑なタイトルがつけられています。暗い話になりそうですね。本巻の後なだけにちょっと手をつけかねる気がしなくも無いですが、カエサルが待っているので頑張ってクリアしましょう。
評価:★★★★★
関連レビュー:
『ローマ人の物語 (3) - ハンニバル戦記(上)』(塩野七生)
『ローマ人の物語 (4) - ハンニバル戦記(中)』(塩野七生)
2010年6月8日火曜日
『ローマ人の物語 (4) - ハンニバル戦記(中)』(塩野 七生)
ただ一人の天才による大国ローマへの侵略と蹂躙。ローマの大敗北、そこからの老練の武将たちによる忍従、抗戦、巻き返し。そしてハンニバルに対抗しうる若き才能の台頭。最終決戦へ向けて、これは燃えます。
クライマックスはハンニバルとスキピオの直接対決になるかと思いますが、カンネの会戦でコテンパンにやられたローマのそれからの粘りが感動的です。ファビウス、マルケルス、グラックス、レヴィヌス、酸いも甘いも吸い尽くした将軍たちの忍耐強さがとても格好いい。
一番格好良かったのは「イタリアの剣」マルケルス。カンネの敗戦を教訓に執拗な追撃戦をしかけます。時に大敗を喫してもくじけず、ハンニバルをして
ローマのすばらしいのは敗者復活の機会が与えられるところですね。スペインで一杯食わされたクラウディウス・ネロが、後にハシュドゥルバルに雪辱を晴らすくだりは溜飲が下がります。マルケルスにしろネロにしろ、負けた経験を蓄積できるのがローマの強みのようです。
そしてスキピオの登場。単身ローマに攻め入り居座り続けるハンニバルに対し、スペイン戦線で同様のことをやり返します。
評価:★★★★☆
関連レビュー:
『ローマ人の物語 (3) - ハンニバル戦記(上)』(塩野七生)
『ローマ人の物語 (5) - ハンニバル戦記(下)』(塩野七生)
クライマックスはハンニバルとスキピオの直接対決になるかと思いますが、カンネの会戦でコテンパンにやられたローマのそれからの粘りが感動的です。ファビウス、マルケルス、グラックス、レヴィヌス、酸いも甘いも吸い尽くした将軍たちの忍耐強さがとても格好いい。
一番格好良かったのは「イタリアの剣」マルケルス。カンネの敗戦を教訓に執拗な追撃戦をしかけます。時に大敗を喫してもくじけず、ハンニバルをして
あの男に対しては何をしてよいかわからない。(中略)勝てば勝ったで追撃をゆるめない。負ければ負けたで、負けなどしなかったかのように追ってくる。(P223)と嘆かせる戦いぶり。半ば事故のような遭遇戦で散った敵将に対し、ハンニバルは丁重に葬るよう命じます。
ローマのすばらしいのは敗者復活の機会が与えられるところですね。スペインで一杯食わされたクラウディウス・ネロが、後にハシュドゥルバルに雪辱を晴らすくだりは溜飲が下がります。マルケルスにしろネロにしろ、負けた経験を蓄積できるのがローマの強みのようです。
そしてスキピオの登場。単身ローマに攻め入り居座り続けるハンニバルに対し、スペイン戦線で同様のことをやり返します。
アレキサンダー大王の最も優秀な弟子がハンニバルであるとすれば、そのハンニバルの最も優れた弟子は、このスキピオではないかと思われる。(P198)二人の天才による決戦に向けて舞台は整えられていきます。
評価:★★★★☆
関連レビュー:
『ローマ人の物語 (3) - ハンニバル戦記(上)』(塩野七生)
『ローマ人の物語 (5) - ハンニバル戦記(下)』(塩野七生)
登録:
投稿 (Atom)

