カルタゴというと、学校の教科書では唐突に現れてローマと戦ってすぐに消えていっちゃいますよね。何だか得体の知れない不思議な国家という印象を持っていました。本書を通して、カルタゴの当時に置ける存在感や、ローマとの大戦にいたる経緯が描かれていきます。ろくな海軍も持たなかった田舎者のローマが、ブイブイ言わせていくさまが実に痛快です。
ハンニバルはまだでてきませんが、お父さんの「ハミルカル」は活躍します。お父さんなんていたんですね。もちろんそれはいるでしょうけれど、鷹の父もまた鷹だったという。ハンニバルも全然ぽっと出ではない、名門出身の坊ちゃんだったということです。
カルタゴはすごい経済力の強国という印象だったので、どうやってローマが勝つのかと思っていましたが、やはり大国というのは内部で色々あったそうです。そのあたりも詳しくかかれていて、とても腑に落ちました。
華々しい史実はもちろんのこと、当時の風土に関する記述も興味深いところです。
ローマ人は肉食人種ではなかった。魚は好んだが、動物の肉には執着していない。(P146)とあって、そのため
ガリア人、とくに後年接触するゲルマン人に対してはとくに、ローマの兵隊は体格で圧倒され、しばしば劣等感に悩んでいた(P146)ということだったそうで・・・なんだかちょっと日本人に似てますね。親近感が沸きます。
文庫化にあたり3冊に分冊のため、1冊目には主役が影くらいしか出てこないわけですが、肩透かし感はあまり感じません。ハンニバルがいなくてもおもしろいですからね。それでも次巻に向けて、期待は否が応にも高まってきました。
評価:★★★☆☆
関連レビュー:
『ローマ人の物語 (4) - ハンニバル戦記(中)』(塩野七生)
『ローマ人の物語 (5) - ハンニバル戦記(下)』(塩野七生)
0 件のコメント:
コメントを投稿