こちらの続編です。
突拍子もない話しをどう着地させるのかと思ったら、これはうならされました。大技炸裂。エモーショナル
に訴えるところが少ないので、物語としての評価は若干キツめになるかもしれませんが、私はこういうトリッキーなの結構好きです。
とにかく事件の規模がバカでかいのです。本物と寸分違わない偽造紙幣があらわれただけでなく、通貨流通量から判断すると1万円冊の2割は偽札と推測される大事態に。国家レベルでもなければ不可能ではないかと思われる大掛かりな犯罪に対し、ラストでは意外な解決を見せます。
多分ツッコミどころもたくさんあると思うんですが、フィクションなんだから野暮は禁物としていただきたいところです。流水大説が好きな人なんかは大喜びできるんじゃないでしょうか。コズミックほどぶっとんではいませんが、ベクトルは似てると思います。
ちょっと脱線が多いのは気になるところです。ミスディレクションを散りばめるのは仕方ないとしても、もっと上手く活用できなかったのかなと。あれって結局意味なかったの?というエピソードが少し多かったように思います。
良きにつけ悪しきにつけ、万能鑑定士であるはずの凜田莉子が人間的な悩みをもって試行錯誤していくのが、本書の特徴ではあります。自分の能力に対して確信を持ちきれず、失敗しながらも徐々に成長していくヒロインのことは嫌いではありません。ただ、万能鑑定士が万能探偵でない点、若干の物足りなさを感じなくもありません。
細部に渡る薀蓄の描写は実にこなれていて、メイントリックの大胆さとあわせてミステリ小説としてかなりいい感じに仕上がっています。次巻以降では、今回の件で成長を積んで、もう少し超然とした凜田莉子を期待したいですね。
評価:★★★☆☆
次巻:
『万能鑑定士Qの事件簿3』(松岡 圭祐)
関連レビュー:
『万能鑑定士Qの事件簿 1』(松岡 圭祐)
2010年6月7日月曜日
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