ハンニバルとの戦いを制し、名実ともに地中海世界の覇者となったローマ。外敵が消えれば内紛が起こります。なんともままならないものです。世界史の教科書でもちょこっと出てくるグラックス兄弟を襲う悲劇の巻。
グラックス兄弟の改革というからには兄弟で手を取り合ってという印象がありましたが、そういうものでもなかったようです。まず兄のティベリウスが改革に着手し反対派に殺され、9歳年下の弟ガイウスが9年後に再び改革をなそうとしてまたしても反対派に殺されます。
グラックス兄弟はかのスキピオ・アフリカヌスを祖父に持ち、母親のコルネリアは長く「ローマの女の鑑」と称えられた才女。良血中の良血といってよい兄弟が非業の死を遂げるのはなんとも悲しいことです。改革派と抵抗派の戦い。立ち位置としては小泉政権みたいなものかと思いますが、流血を伴うのが現代との違い。
その流れは、ヌミディアや北方民族との戦争における非常時体制の中で、マリウスの軍制改革という形で引き継がれましたが、これも戦争が終わるや破綻。古今東西、制度疲労というのは一筋縄ではいかないものなのですね。
次巻ではスッラとポンペイウスの改革となります。そして着々とユリウス・カエサルの足音が近づいてくるのです。
関連レビュー:
『ローマ人の物語 (7) - 勝者の混迷(下)』(塩野七生)
評価:★★★☆☆
2010年6月15日火曜日
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