澪と小松原の仲を進める気があるとは思っていませんでした。色々大きな軸のあるなか、筆者の野望が垣間見えたような気がします。俄然面白い展開を見せつつ、各話の作りこみも相変わらずお見事。みをつくし料理帖シリーズ第5弾です。
本巻では結構話が動きましたね。4話とも秀逸でした。以下、各話の感想です。
■ 迷い蟹 - 浅利の御神酒蒸し
「つる家」屋号のもととなった、店主「種市(たねいち)」の娘「おつる」の亡くなった事情が明らかになります。心にしっくり染み入るエンディングがお見事です。
■ 夢宵楼 - 菜の花尽くし
吉原きっての妓楼「翁屋(おきなや)」から花見の宴の料理を頼まれた澪。苦心の末に考え出した、大尽がたを唸らせる食材とは。隠れキャラみたいな「旭日昇天」が登場するとそれだけで嬉しいですね。
■ 小夜しぐれ - 寿ぎ善
澪の友人で大店の娘「美緒(みお)」に縁談が進められます。彼女の思い人を知る澪は複雑な胸中となりますが・・・。この話題はもう少し引っ張るのかと思っていたのでちょっとびっくりです。
■ 嘉承 - ひとくち宝珠
御膳奉行「小野寺一馬(おのでらかずま)」が、嫌いな菓子作りに苦心するお話し。めずらしく澪が登場しません。以前からほのめかされていた小松原の正体がいよいよ明らかになります。
小松原との仲、旭日昇天の身請け、天満一兆庵の再興と、到底かないそうも澪の願望がそれぞれに動きを見せてきました。もしかして、全部大団円にしようとしてます?ハッピーエンド好きの私には嬉しすぎる展開に、今後もますます目が離せません。
評価:★★★★☆
シリーズ一作目はこちら
2011年3月19日土曜日
2011年3月16日水曜日
戦闘妖精・雪風(改)(神林長平)
知らない人のために言っておくと、ファンタジックな妖精物語ではありません。主人公は戦闘機「雪風(ゆきかぜ)」のパイロット「深井零(ふかいれい)」。彼と各話で迎えるゲストキャラが織り成す、クールでちょっぴりほろ苦いSF連作短編集です。
突如、南極の超空間通路から侵攻してきた異星体「ジャム」。それを撃退するために、通路向こう側の異世界惑星「フェアリイ」を拠点とした地球軍のなかで、とりわけ重要な役割を担うのが13機の戦術偵察機「スーパーシルフ」です。雪風はその中の一機となります。
国産SFのなかでもかなり有名な本作品。いつか読みたいと思いつつタイミングを逃してきましたが、たまたまブックオフで発見したので手にとってみました。全8作のそれぞれが実に渋い味わいで、熱烈なファンの多さもなるほど納得させられました。
妖精というからには雪風自身が意思をもつような設定かと思っていましたが、そこはちょっと微妙なところです。偵察機としての任務上、雪風らスーパーシルフには高度な電子頭脳が搭載されていますが、人間のような意思や感情を持つわけではないようにみえます。
クールでありながら雪風に並々ならぬ思い入れを持つ零ですが、雪風の進化は彼自身の存在意義にさえ疑問を抱かせます。そもそもジャムの視界に人間は入っているのか。ジャムvs人間ではなくジャムvs戦闘妖精なのでは?
人間の存在を脅かす人工頭脳というテーマは良く見られるものかもしれませんが、1984年に書かれた古い作品であるにもかかわらず、今読んでみても陳腐さが全く感じられません。全編通したハードボイルドな雰囲気がぐっと来ます。
そんな背景のなか、各話ではエリートパイロット、ジャーナリスト、末端の雪かき構成員など、様々なゲストが登場して、ちょっとほろ苦い人間ドラマを見せてくれます。パキパキしたSF設定に納まりきらない物語の凄み。なのにどこまでいってもSFでしかありえないと感じさせられるのが不思議なところです。
アマゾンのレビューでも絶賛ばかりが目立ちますが、消化されていない伏線などもあるため、ストーリー重視の私としては若干もやもやが残らなくもありません。ただ、あとがきによると改稿に伴う続編への味付けもいくつか入っているようなので、本当の評価は続きを読んでからになるかと思います。
評価:★★★☆☆
突如、南極の超空間通路から侵攻してきた異星体「ジャム」。それを撃退するために、通路向こう側の異世界惑星「フェアリイ」を拠点とした地球軍のなかで、とりわけ重要な役割を担うのが13機の戦術偵察機「スーパーシルフ」です。雪風はその中の一機となります。
国産SFのなかでもかなり有名な本作品。いつか読みたいと思いつつタイミングを逃してきましたが、たまたまブックオフで発見したので手にとってみました。全8作のそれぞれが実に渋い味わいで、熱烈なファンの多さもなるほど納得させられました。
妖精というからには雪風自身が意思をもつような設定かと思っていましたが、そこはちょっと微妙なところです。偵察機としての任務上、雪風らスーパーシルフには高度な電子頭脳が搭載されていますが、人間のような意思や感情を持つわけではないようにみえます。
クールでありながら雪風に並々ならぬ思い入れを持つ零ですが、雪風の進化は彼自身の存在意義にさえ疑問を抱かせます。そもそもジャムの視界に人間は入っているのか。ジャムvs人間ではなくジャムvs戦闘妖精なのでは?
人間の存在を脅かす人工頭脳というテーマは良く見られるものかもしれませんが、1984年に書かれた古い作品であるにもかかわらず、今読んでみても陳腐さが全く感じられません。全編通したハードボイルドな雰囲気がぐっと来ます。
そんな背景のなか、各話ではエリートパイロット、ジャーナリスト、末端の雪かき構成員など、様々なゲストが登場して、ちょっとほろ苦い人間ドラマを見せてくれます。パキパキしたSF設定に納まりきらない物語の凄み。なのにどこまでいってもSFでしかありえないと感じさせられるのが不思議なところです。
アマゾンのレビューでも絶賛ばかりが目立ちますが、消化されていない伏線などもあるため、ストーリー重視の私としては若干もやもやが残らなくもありません。ただ、あとがきによると改稿に伴う続編への味付けもいくつか入っているようなので、本当の評価は続きを読んでからになるかと思います。
評価:★★★☆☆
2011年3月13日日曜日
特急便ガール!(美奈川 護)
専務をぶん殴って一流商社をやめた女主人公「吉原陶子(よしはらとうこ)」の男らしさが実に良いです。脇キャラたちも味があって作品の雰囲気は文句なしなのですが、陶子の「特殊能力」をどうとらえるかで、作品への評価は分かれそうです。
超能力っぽいものがでてくる点に少し躊躇していたのですが、設定としては超能力というよりファンタジーっぽいです。4話構成のなかで徐々に能力の全貌が見えてくるあたり、なかなかいい感じの話し作りだったと思います。
ただ、登場人物も設定もとても魅力的なだけに、特殊能力に頼る必要があったのかなという気が個人的にはします。うまくすれば有川浩さんみたいな話になりそうなんですけどね。
リアルな部分の話も特殊能力がらみのエピソードもそれぞれに質が高いのが、逆に作品の雰囲気をちぐはぐにしている印象です。パーツは優れているのに、組み立ててみたらバランスが悪かったという。
個人的に本書で一番好きなのは、初っ端の入社試験の話です。「さおりん」の素性に関するエピソードも、ミステリチックでよかったですね。どちらも全く特殊能力が絡みません。変な能力がなくても、素で十分面白いんです。
大人なキャラ萌えやいい話系が好きな方にはお勧めです。デビュー作
と比べて作品の雰囲気もずっと私好みになっていたので、今後に期待したいです。次は超能力無しの作品が読みたいですね・・・
評価:★★☆☆☆
超能力っぽいものがでてくる点に少し躊躇していたのですが、設定としては超能力というよりファンタジーっぽいです。4話構成のなかで徐々に能力の全貌が見えてくるあたり、なかなかいい感じの話し作りだったと思います。
ただ、登場人物も設定もとても魅力的なだけに、特殊能力に頼る必要があったのかなという気が個人的にはします。うまくすれば有川浩さんみたいな話になりそうなんですけどね。
リアルな部分の話も特殊能力がらみのエピソードもそれぞれに質が高いのが、逆に作品の雰囲気をちぐはぐにしている印象です。パーツは優れているのに、組み立ててみたらバランスが悪かったという。
個人的に本書で一番好きなのは、初っ端の入社試験の話です。「さおりん」の素性に関するエピソードも、ミステリチックでよかったですね。どちらも全く特殊能力が絡みません。変な能力がなくても、素で十分面白いんです。
大人なキャラ萌えやいい話系が好きな方にはお勧めです。デビュー作
評価:★★☆☆☆
2011年3月10日木曜日
大絵画展(望月諒子)
「医師ガシェの肖像」にちなんだ美術ミステリ。正直、最初は読み進めるのが苦痛で仕方なかったのですが、後半になってからは雰囲気が一転します。ミステリとしてのプロットは素晴らしいですが、読み方によって評価が大きく分かれる作品かもしれません。
第14回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作なのだそうです。新人さんなら多少構成が稚拙なのも仕方ないかと思っていたら、既に何冊か本を出しておられる方なのですね。うーん。
ものすごくおおざっぱに説明すると、詐欺被害にあった人たちが協力して仕返しをするというストーリーなのですが、出だしのぐだぐだ感はただ事ではありません。
被害者たちの背景が結構綿密に描かれているのですが、リアル感と読みやすさのバランスが決定的に欠けているように思いました。それが延々と続くので、ほんとどうしようかと。
ところが実際に仕返しする段になって、話が大きく展開します。クライマックスにおける二転三転のどんでん返しはお見事の一言。私としては、他のあらゆる欠点を取り戻してお釣りがくるくらいでした。
もっとも、それで素直に収束してくれないのも、この作品の難しいところです。ラスト数十ページの蛇足感は非常にもったいない。三分の一くらいにまとめられなかったものでしょうか。
個人的にはミステリとしてのプロットだけでもこの作品を評価したい気持ちがありますが、これを人に勧められるかとなるとちょっぴり難しいです。面白くなるところまでにどれだけの人がついて来られるのか・・・
際物好きのミステリファンにはかなりお勧めです。私は筆者の短編ならもう一度読んでみたいかも。長所と短所が極端に入り交じった印象なので、一つ掛け違えるとものすごい傑作になりそうな気もします。
評価:★☆☆☆☆
第14回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作なのだそうです。新人さんなら多少構成が稚拙なのも仕方ないかと思っていたら、既に何冊か本を出しておられる方なのですね。うーん。
ものすごくおおざっぱに説明すると、詐欺被害にあった人たちが協力して仕返しをするというストーリーなのですが、出だしのぐだぐだ感はただ事ではありません。
被害者たちの背景が結構綿密に描かれているのですが、リアル感と読みやすさのバランスが決定的に欠けているように思いました。それが延々と続くので、ほんとどうしようかと。
ところが実際に仕返しする段になって、話が大きく展開します。クライマックスにおける二転三転のどんでん返しはお見事の一言。私としては、他のあらゆる欠点を取り戻してお釣りがくるくらいでした。
もっとも、それで素直に収束してくれないのも、この作品の難しいところです。ラスト数十ページの蛇足感は非常にもったいない。三分の一くらいにまとめられなかったものでしょうか。
個人的にはミステリとしてのプロットだけでもこの作品を評価したい気持ちがありますが、これを人に勧められるかとなるとちょっぴり難しいです。面白くなるところまでにどれだけの人がついて来られるのか・・・
際物好きのミステリファンにはかなりお勧めです。私は筆者の短編ならもう一度読んでみたいかも。長所と短所が極端に入り交じった印象なので、一つ掛け違えるとものすごい傑作になりそうな気もします。
評価:★☆☆☆☆
2011年3月7日月曜日
放課後はミステリーとともに(東川篤哉)
私立鯉ケ窪学園を舞台としたミステリ短編集です。バカ売れしまくっているらしい前作よりもミステリ分は高いのですが、雑誌掲載分を集めたもののせいか、短編集としての統一感はいまいちのような気もします。本質はキャラ萌え小説といっていいくらいかもしれません。
「エアコン」のあだ名を持つ、ちょっと空回り気味の探偵部副部長「霧ヶ峰涼(きりがみねりょう)」。この主人公に感情移入できるかどうかで、本作の評価は決まってきそうです。私も一話目はちょっとうざいキャラかなと感じていたのですが、二話目以降はすっかりはまってしまいました。
一話目だけちょっと古い作品のようなので(2003年6月初出)、その分少し風景がかわって見えるのかもしれません。ただ、ミステリとしてのできはむしろ一話目が一番良いくらいなので、書店でちら読みするのであれば冒頭だけで放り出さないようお勧めいたします。
全8作品。ミステリ分は基本的に高いですが、質的には割とばらつきがあるかもしれません。連作短編形式ではないので、多少設定に気になるところがあっても、あまり深読みはしないほうが良いかと思います。一話目、二話目、四話目あたりが私的には好みの作品でした。
個人的に一番不満なのは、探偵役が一番ハマる顧問の石崎先生が、全8話中3話にしか出てこないことです。探偵としてはギリギリ名探偵という程度の霧ヶ峰。石崎先生を相手にボケ役に徹したときこそが魅力全開の瞬間です。逆に、言っては悪いですが探偵役をやらせるといまいち締まらない印象も・・・
ミステリとしては平均するとまあ上質と言った程度の本書ですが、一番の魅力を端的に表現するなら○○○○○○です。これを明かすとある作品のネタバレに絡んでくるのが、レビュアー泣かせなところです。同学園を舞台にした関連小説もあるようなので、そちらにもチャレンジしてみたいと思います。
評価:★★★★☆
関連書籍:
「エアコン」のあだ名を持つ、ちょっと空回り気味の探偵部副部長「霧ヶ峰涼(きりがみねりょう)」。この主人公に感情移入できるかどうかで、本作の評価は決まってきそうです。私も一話目はちょっとうざいキャラかなと感じていたのですが、二話目以降はすっかりはまってしまいました。
一話目だけちょっと古い作品のようなので(2003年6月初出)、その分少し風景がかわって見えるのかもしれません。ただ、ミステリとしてのできはむしろ一話目が一番良いくらいなので、書店でちら読みするのであれば冒頭だけで放り出さないようお勧めいたします。
全8作品。ミステリ分は基本的に高いですが、質的には割とばらつきがあるかもしれません。連作短編形式ではないので、多少設定に気になるところがあっても、あまり深読みはしないほうが良いかと思います。一話目、二話目、四話目あたりが私的には好みの作品でした。
個人的に一番不満なのは、探偵役が一番ハマる顧問の石崎先生が、全8話中3話にしか出てこないことです。探偵としてはギリギリ名探偵という程度の霧ヶ峰。石崎先生を相手にボケ役に徹したときこそが魅力全開の瞬間です。逆に、言っては悪いですが探偵役をやらせるといまいち締まらない印象も・・・
ミステリとしては平均するとまあ上質と言った程度の本書ですが、一番の魅力を端的に表現するなら○○○○○○です。これを明かすとある作品のネタバレに絡んでくるのが、レビュアー泣かせなところです。同学園を舞台にした関連小説もあるようなので、そちらにもチャレンジしてみたいと思います。
評価:★★★★☆
関連書籍:
2011年3月4日金曜日
キルリアン・ブルー(矢崎存美)
サスペンスホラーという分類になるのでしょうか。ミステリ分が少なめなのは個人的に物足りなかったですが、中盤のハラハラ展開にはぐっと引き込まれました。全編通したきれいな雰囲気をどうとらえるかで、評価の分かれる作品かと思います。
死体に触ると死ぬ直前の記憶が見える少女「古賀葉月(こがはづき)」が、ある男に誘拐されて強引に死者の記憶を見せられます。犯人の意図、彼女の見た記憶の意味、さらには父の失踪への関与。様々な疑問が生まれるなか、今度は彼女が接触を持った人物が次々と殺されていきます。
筆者の作品はあまり読んでいないのですが、「ぶたぶた」の印象からほんわか系なもの専門の方かと思っていました。本作はシリアス一辺倒。ただし文章は読みやすいですし、ホラーっぽい展開ながらも怖いというよりきれいな世界観が印象的です。
私はあまり怖いのが得意ではないので、その意味では本作の雰囲気はありがたいくらいでしたが、ホラー好きの方には物足りなさも感じられるかもしれません。むしろ私としてはミステリー分の薄さのほうがちょっと残念な感じでした。謎を引っ張っている割には解決篇で滑っているような・・・
途中の展開は素晴らしかったと思います。見えない敵の影におびえる恐怖、身近な人間に迫る危機。ページ数が少ないとはいえ、この手の作品を一気に読みきれたのは私にとってはめずらしいことです。過程が良かった分、逆に着地点への評価が厳しくなってしまったところはあるかもしれません。
全体的な印象としては、どのあたりをターゲットにしてるか若干の疑問を感じました。恋愛フラグっぽいものもあるとはいえ、とても青春ものと呼べるような話ではありませんし、シリアス基調なので萌え成分も皆無ですし、かといってホラーとしてもそれほど怖いわけではありません。
作品の質とは別のところで、「誰得?」というのが本書の正直な感想です。ホラー方面に詳しくないので、最近の流行はそういうものなのかもしれませんけれど。文章を読ませる筆者の力量自体は見事だと思いましたが、何が売りなのかわかりにくい分、人にはお勧めしにくい作品かもしれません。
評価:★☆☆☆☆
死体に触ると死ぬ直前の記憶が見える少女「古賀葉月(こがはづき)」が、ある男に誘拐されて強引に死者の記憶を見せられます。犯人の意図、彼女の見た記憶の意味、さらには父の失踪への関与。様々な疑問が生まれるなか、今度は彼女が接触を持った人物が次々と殺されていきます。
筆者の作品はあまり読んでいないのですが、「ぶたぶた」の印象からほんわか系なもの専門の方かと思っていました。本作はシリアス一辺倒。ただし文章は読みやすいですし、ホラーっぽい展開ながらも怖いというよりきれいな世界観が印象的です。
私はあまり怖いのが得意ではないので、その意味では本作の雰囲気はありがたいくらいでしたが、ホラー好きの方には物足りなさも感じられるかもしれません。むしろ私としてはミステリー分の薄さのほうがちょっと残念な感じでした。謎を引っ張っている割には解決篇で滑っているような・・・
途中の展開は素晴らしかったと思います。見えない敵の影におびえる恐怖、身近な人間に迫る危機。ページ数が少ないとはいえ、この手の作品を一気に読みきれたのは私にとってはめずらしいことです。過程が良かった分、逆に着地点への評価が厳しくなってしまったところはあるかもしれません。
全体的な印象としては、どのあたりをターゲットにしてるか若干の疑問を感じました。恋愛フラグっぽいものもあるとはいえ、とても青春ものと呼べるような話ではありませんし、シリアス基調なので萌え成分も皆無ですし、かといってホラーとしてもそれほど怖いわけではありません。
作品の質とは別のところで、「誰得?」というのが本書の正直な感想です。ホラー方面に詳しくないので、最近の流行はそういうものなのかもしれませんけれど。文章を読ませる筆者の力量自体は見事だと思いましたが、何が売りなのかわかりにくい分、人にはお勧めしにくい作品かもしれません。
評価:★☆☆☆☆
2011年3月3日木曜日
真夏の日の夢(静月遠火)
「七回死んだ男」と「11人いる!」を足して割ったような感じのお話しです。ミステリとしては甘いかなというところもありますが、メインの仕掛けはお見事でした。無理せず良いバランスでまとめあげた佳作だと思います。
高額のバイト代につられて、一ヶ月間ボロ家に閉じこもる実験をすることになった演劇サークルの面々。多少のいざこざはありながらも、和気藹々と練習をこなす日々でしたが、一人の女性メンバーが失踪したのをきっかけに、事態は動き始めます。
前半は割りと緩い雰囲気で話が続くのですが、私としてはそのだらだら感が結構ツボでした。ただし、緩いながらもところどころに伏線が散りばめられているので油断なりません。いわゆる読み返して二度美味しい作品。きれいに騙されてしまいました。
ミステリとしてしては若干アンフェアに感じられるところもあるかもしれません。物語の仕掛け的にやむをえないのですが、屋内のディテールをきちんと表現しきれなかったため、解決篇では唐突に感じられる部分も多少あったように思えます。
ただ、物語のまとめ方はお見事です。このようなクローズド・サークルものでそれっぽい臨場感を演出するのはかなりのスキルを要すると思うのですが、その点本作は無理せず無難なところに落としどころをもっていった印象です。こういう割り切ったアッサリ感はかなり私の好みです。
筆者のデビュー作「パララバ」を既読だったのに後から気がつきました。当時と比べると着実にレベルアップしているようなので、今後の作品にも大いに期待したいと思います。
評価:★★★☆☆
高額のバイト代につられて、一ヶ月間ボロ家に閉じこもる実験をすることになった演劇サークルの面々。多少のいざこざはありながらも、和気藹々と練習をこなす日々でしたが、一人の女性メンバーが失踪したのをきっかけに、事態は動き始めます。
前半は割りと緩い雰囲気で話が続くのですが、私としてはそのだらだら感が結構ツボでした。ただし、緩いながらもところどころに伏線が散りばめられているので油断なりません。いわゆる読み返して二度美味しい作品。きれいに騙されてしまいました。
ミステリとしてしては若干アンフェアに感じられるところもあるかもしれません。物語の仕掛け的にやむをえないのですが、屋内のディテールをきちんと表現しきれなかったため、解決篇では唐突に感じられる部分も多少あったように思えます。
ただ、物語のまとめ方はお見事です。このようなクローズド・サークルものでそれっぽい臨場感を演出するのはかなりのスキルを要すると思うのですが、その点本作は無理せず無難なところに落としどころをもっていった印象です。こういう割り切ったアッサリ感はかなり私の好みです。
筆者のデビュー作「パララバ」を既読だったのに後から気がつきました。当時と比べると着実にレベルアップしているようなので、今後の作品にも大いに期待したいと思います。
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