「小さいおうち」で直木賞を受賞された中島氏の本が文庫化されていたので手にとってみました。家族問題ということで重めになりがちな題材を扱っていますが、作品の雰囲気自体はコミカルかつシニカルで、とても読みやすかったです。
亭主の自己破産やら出戻りやら三十路ニートやら、あれよあれよと増えていって8人の大家族。それぞれが抱える問題を順に描いていくのですが、最後は一応大団円っぽくおさまります。11の連作短編形式となっていますが、各話のつながりが強めなので一つの長編と考えたほうが良いかもしれません。
私の中でのMVPは、三十路ニートの末っ子「克郎(かつろう)」ですが、人によっては彼のパートはちょっと拒否感がおきるかもしれません。あまりにもご都合主義に話が進みます。私にもちょっとおすそ分けしてほしいくらいうらやましい結末です。こういうあからさまなのは私大好きです。
父親の自己破産により有名私立中学から都立へ移らなければならなくなった「さとる」のパートもよかったですね。いじめを心配してクールに方針やら計画やらをたてて実践し、ある程度の成果は収めるのですが、そんな彼にもちょっとほろ苦い事件が起こります。
克郎の姉二人「逸子」と「友恵」については、子育てとかシングルマザーとかあからさまに女性ならではの視点で話が進むので、男の私としてはちょっと感情移入しにくいところがありました。ただ、ストーリー自体は面白いので、飽きずに読み進めることが出来ました。
なんといっても、それぞれの問題にそれなりのオチをつけてくれているのが私には嬉しかったです。なんとなく小難しい雰囲気だけの小説が苦手なので、その点では大好きな作風でした。作者が女性ということもあって、ちょっぴり女性視点が勝ちすぎるところは感じましたが、それを補って余りある良い意味での文体の軽さが素晴らしいと思いました。
評価:★★★☆☆
2010年9月25日土曜日
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