莉子が故郷の危機を救うために台湾出張。展開的にはいつも通りな感じで面白かったですが、流石にそれはないんじゃないかという設定もちらほら。まあ、このシリーズは無理筋を突っ込んだら負けですけど(^^;
水不足で悩む故郷、波照間島。海水を濾過するだけで真水にするという夢のような装置を12億円かけて購入しようとしますが、いかにも胡散臭げな技術に対して、莉子が旧友二人とともに裏を取りに動き出します。
今回は莉子のほかにも綺麗どころがたくさん登場してなかなか華やかな雰囲気です。特に現地ホテルに勤める通訳の美玲さんが良い味出してますね。しかし、アンパンマンの件は同じ男性として許せません!(笑)
故郷に戻った莉子の純朴な雰囲気も良いですが、初めて訪れた台湾におけるスーパーレディぶりも相変わらずです。絶体絶命を思わせる状況からの鮮やかな逆転劇もお見事でした。
ただ・・・無理な設定はいつものことですが、今回はあまりに無理が過ぎるような気もします。予算の1/3もの大金をそんなに即決で支払い決めちゃってますし、東大教授が胡散臭い技術をあっさり妄信し過ぎですし、SIMの件とか電話で地元警察に誤認させた件とか、気づかないなんてあり得ないですし(ネタバレにつき反転してみてください)。
無理があるのはいつものこととはいえ、今回はちょっとあまりにあれな感じもしてしまいました。ただ、そもそもこのシリーズは「突っ込んだら負けよ」ゲーム的なところがあるので、単に今回は私の負けというだけのことなのでしょう(^^;
評価:★★☆☆☆
2011年2月26日土曜日
2011年2月24日木曜日
天使はモップを持って(近藤史恵)
ギャルっぽい外見ながら凄腕の掃除人「キリコ」が活躍する連作ミステリ短編集です。コージーっぽい雰囲気ですが、油断していると痛い目を見るかもしれません。
キリコシリーズの第1弾だそうです。最近出た4作目を書店でたまたま見かけて興味が出たので、一作目の本書から入ってみることにしました。
新入社員「梶本大介(かじもとだいすけ)」の視点から、名探偵キリコの活躍が語られています。お察しの通り、二人はいい仲っぽい雰囲気になるのですが、キリコのクールな性格のためか、それほどべたべた感はありません。
大きい会社を一人で掃除してまわるというのは現実的に可能なのかわかりませんが、キリコのプロフェッショナルなスキルや職業意識の高さは、当然ながら本書でもっとも読み応えのあるところといえます。
全8話のどれも面白かったですが、なかでも第1話と最後の7話、8話が良かったですね。能天気な雰囲気で話が進む割に、ちょっとどきりとするような展開が随所に差し込まれるのは、お見事というほかありません。
設定や素のストーリーも面白いのですが、作品によってはちょっと叙述トリックっぽいものもあって、ミステリとしてもなかなかハイレベルです。
読みやすい割にピリリと辛さもきいて、万人向けに楽しんでいただける作品ではないかと思います。ラストがいかにも完結っぽい雰囲気で終わっているのですが、続巻はどのような展開になっているのか楽しみです。
評価:★★★☆☆
キリコシリーズの第1弾だそうです。最近出た4作目を書店でたまたま見かけて興味が出たので、一作目の本書から入ってみることにしました。
新入社員「梶本大介(かじもとだいすけ)」の視点から、名探偵キリコの活躍が語られています。お察しの通り、二人はいい仲っぽい雰囲気になるのですが、キリコのクールな性格のためか、それほどべたべた感はありません。
大きい会社を一人で掃除してまわるというのは現実的に可能なのかわかりませんが、キリコのプロフェッショナルなスキルや職業意識の高さは、当然ながら本書でもっとも読み応えのあるところといえます。
全8話のどれも面白かったですが、なかでも第1話と最後の7話、8話が良かったですね。能天気な雰囲気で話が進む割に、ちょっとどきりとするような展開が随所に差し込まれるのは、お見事というほかありません。
設定や素のストーリーも面白いのですが、作品によってはちょっと叙述トリックっぽいものもあって、ミステリとしてもなかなかハイレベルです。
読みやすい割にピリリと辛さもきいて、万人向けに楽しんでいただける作品ではないかと思います。ラストがいかにも完結っぽい雰囲気で終わっているのですが、続巻はどのような展開になっているのか楽しみです。
評価:★★★☆☆
2011年2月22日火曜日
ローマ人の物語〈36〉最後の努力〈中〉(塩野七生)
コンスタンティヌス帝の登場。混乱を実力で収めた立派な皇帝だとは思いますが、先からの混乱でローマらしさがすっかり失われてしまい、読んでてあまり楽しくはないですね。我々が帝政と聞いてイメージする体制にどんどん近くなっています。
前回レビューでは触れませんでしたが、先のディオクレティアヌス帝により四頭政というものが始められています。国境のあちこちが破られたことに対応するため、帝国を東西二分した上で、それぞれに正帝と副帝を設けるというもの。状況的にやむをえなかったとはいえ、結局ちゃんと機能したのは一代だけということになりました。
四頭といっても、一応東の政帝が最上位とされていました。その地位に名実ともに明らかな第一人者であるディオクレティアヌスが就いていたからこそ、うまく回っていたのでしょう。ディオクレティアヌスの引退とともにあっという間に崩壊してしまいました。その混乱を収めたのがコンスタンティヌス帝です。
コンスタンティヌスは西の正帝の長男とはいえ、先妻の息子ということもあったため、後継者としてはそれほど有力な位置にいたわけでもなかったようです。
ただ、もともとの実力と声望に加え、父親の死に際にちょうど傍らで将軍職を務めていたタイミングがよかったとのこと。軍事政権になってからの後継者選定は、現場主導というよりその場の雰囲気といったほうが近いですから。
ディオクレティアヌスが約20年、そしてコンスタンティヌスが約30年の在位となります。その前までの皇帝がすぐに入れ替わる混乱期と比べて、国状はそれなりの安定を見せたようです。ただし、軍事費増大、職業固定、象徴としてのローマ軽視。重苦しい雰囲気はますます強まっていきます。
そこにキリスト教発展のきっかけがあったのでしょう。コンスタンティヌスといえばキリスト教の公認で有名ですが、このような世情が背景にあったことをわかっていないと、なんとも唐突に感じられますね。受験時代のもやもやが今頃晴れた感じです(^^;
評価:★★☆☆☆
前回レビューでは触れませんでしたが、先のディオクレティアヌス帝により四頭政というものが始められています。国境のあちこちが破られたことに対応するため、帝国を東西二分した上で、それぞれに正帝と副帝を設けるというもの。状況的にやむをえなかったとはいえ、結局ちゃんと機能したのは一代だけということになりました。
四頭といっても、一応東の政帝が最上位とされていました。その地位に名実ともに明らかな第一人者であるディオクレティアヌスが就いていたからこそ、うまく回っていたのでしょう。ディオクレティアヌスの引退とともにあっという間に崩壊してしまいました。その混乱を収めたのがコンスタンティヌス帝です。
コンスタンティヌスは西の正帝の長男とはいえ、先妻の息子ということもあったため、後継者としてはそれほど有力な位置にいたわけでもなかったようです。
ただ、もともとの実力と声望に加え、父親の死に際にちょうど傍らで将軍職を務めていたタイミングがよかったとのこと。軍事政権になってからの後継者選定は、現場主導というよりその場の雰囲気といったほうが近いですから。
ディオクレティアヌスが約20年、そしてコンスタンティヌスが約30年の在位となります。その前までの皇帝がすぐに入れ替わる混乱期と比べて、国状はそれなりの安定を見せたようです。ただし、軍事費増大、職業固定、象徴としてのローマ軽視。重苦しい雰囲気はますます強まっていきます。
そこにキリスト教発展のきっかけがあったのでしょう。コンスタンティヌスといえばキリスト教の公認で有名ですが、このような世情が背景にあったことをわかっていないと、なんとも唐突に感じられますね。受験時代のもやもやが今頃晴れた感じです(^^;
評価:★★☆☆☆
2011年2月18日金曜日
ちあき電脳探偵社(北森鴻)
北森鴻の遺した唯一のジュブナイルなのだそうです。小学3年生の「鷹坂ちあき」を主人公としたミステリ連作短編集。「電脳」の設定などはいかにも子供向けといった感じですが、肝心のミステリトリックがなかなか油断ならないのは流石です。
本書は雑誌「小学三年生」に連載されていた「ちあき電脳探てい社」を文庫化したものだとか。掲載時期は1996年4月~1997年3月と、かなり昔の作品です。150ページ弱でフォントも大きめ。このボリュームで一冊にするのは、筆者が亡くなったタイミングでなければ難しかったのかもしれません。
転校してきたちあきとご近所になった同級生「井沢コウスケ」の一人称で語られています。
電脳の設定はちょっと微妙な感じかもしれません。凄いコンピュータにゴーグルで接続して何とかかんとか。正直、文字通りの「子供だまし」といった印象ではありますが、そもそも子供向けなのですから当たり前です。
実のところ、ちあきは素の状態でもかなり名探偵なので、電脳設定の意味については私にはいまいちピンときませんでした。
ところがその設定、話を重ねるに連れてだんだん影が薄くなっていっちゃいます。そして何故か、それに比例して物語のクオリティが上がっていっているような・・・なんとも皮肉感じです(^^;
もっともミステリ的な仕掛け自体は、1話目から結構うならされました。流石は短編の名手。あるいは私の読者としてのレベルが小学三年生並というだけかもしれませんが。
ちなみにちあきとコウスケはともに片親で、お互いの親同士がなんとなくいい雰囲気になったりします。これ、うまく転べば二人は義理の兄妹なんですよね。なんとも美味しい設定。5年後くらいの続編が読みたかったです。
子供向けということに目をつむれば、それなりに楽しめる作品ではないかと思います。芦辺拓さんによるあとがきも興味深いですし、北森鴻さんのファンであれば読んでみて損することは無いかと思います。
評価:★★★☆☆
本書は雑誌「小学三年生」に連載されていた「ちあき電脳探てい社」を文庫化したものだとか。掲載時期は1996年4月~1997年3月と、かなり昔の作品です。150ページ弱でフォントも大きめ。このボリュームで一冊にするのは、筆者が亡くなったタイミングでなければ難しかったのかもしれません。
転校してきたちあきとご近所になった同級生「井沢コウスケ」の一人称で語られています。
電脳の設定はちょっと微妙な感じかもしれません。凄いコンピュータにゴーグルで接続して何とかかんとか。正直、文字通りの「子供だまし」といった印象ではありますが、そもそも子供向けなのですから当たり前です。
実のところ、ちあきは素の状態でもかなり名探偵なので、電脳設定の意味については私にはいまいちピンときませんでした。
ところがその設定、話を重ねるに連れてだんだん影が薄くなっていっちゃいます。そして何故か、それに比例して物語のクオリティが上がっていっているような・・・なんとも皮肉感じです(^^;
もっともミステリ的な仕掛け自体は、1話目から結構うならされました。流石は短編の名手。あるいは私の読者としてのレベルが小学三年生並というだけかもしれませんが。
ちなみにちあきとコウスケはともに片親で、お互いの親同士がなんとなくいい雰囲気になったりします。これ、うまく転べば二人は義理の兄妹なんですよね。なんとも美味しい設定。5年後くらいの続編が読みたかったです。
子供向けということに目をつむれば、それなりに楽しめる作品ではないかと思います。芦辺拓さんによるあとがきも興味深いですし、北森鴻さんのファンであれば読んでみて損することは無いかと思います。
評価:★★★☆☆
2011年2月16日水曜日
死をもちて赦されん(ピーター・トレメイン)
フィデルマシリーズの邦訳第6弾ですが、原著では本作が長編一作目となるので、オリジナルに忠実に読むのであれば、本書から入るのもありかと思います。なんといっても見所はフィデルマとエイダルフの出会い。当初のギクシャクした間柄から徐々に打ち解けていく様子がなんとも素敵です。
邦訳のうち3作までは読んでいましたが、人間関係でわからないところも多かったので、本来のシリーズ第一弾たる本書はまさに待ちに待ったといったところです。ただし翻訳の順番に関しては、訳者の思惑が正しかったのかなと認めざるを得ないというのが本書を読み終えての感想です。理由は二点。
一点目は、あとがきにもある通り本書の舞台がアイルランドではないこと。本シリーズ最大の特色は、古代アイルランドの世相を描いているところにあると思います。ブリテン(イギリス)を舞台にローマ派とケルト派の両キリスト教派が激論をぶつける様子は、歴史的観点からは大変興味深いのですが、シリーズの特徴が十全に発揮されているとは言いがたいでしょう。
二点目は、言いにくいですがミステリそのものとしての質の問題。フィデルマシリーズの長編については2作を既読ですが、真相の意外性やサスペンス的な展開の妙については、両作とも本書より明らかに勝っていたように感じられます。また、王妹たるフィデルマの権威も、外国が舞台とあってはあまり活かしきれていません。
もっとも、フィデルマとエイダルフが出会うエピソードは、やはり良いです。二人の関係が友人の延長にすぎないのか、あるいは恋愛模様に発展する色合いを見せるのかが、本書を読むことで明らかになったように思います。どっちなんだというところは、ご自身でお確かめいただいたほうが良いでしょう。
本書における「教会会議(シノド)」とは実際に歴史上存在するイベントなのだそうです(ウィットビー教会会議-Wikipedia参照)。史実における大イベントの裏でうごめいていた事件という形で、フィデルマたちの活躍が描かれています。しかし、登場人物のどこまでがフィクションでどこまでが実在の人物なのでしょう。
ケルト派とローマ派ということで、フィデルマとエイダルフはいわばロミオとジュリエット的な立場にあります。そのため、この二人が本格的にコイバナを展開することはないのかと思っていたのですが、その辺りの展開についてのヒントも本書のなかにあるようですね。本書を念頭に既刊も再読してみたいなと思いました。
評価:★★☆☆☆
ピーター・トレメインの関連レビューはこちら
邦訳のうち3作までは読んでいましたが、人間関係でわからないところも多かったので、本来のシリーズ第一弾たる本書はまさに待ちに待ったといったところです。ただし翻訳の順番に関しては、訳者の思惑が正しかったのかなと認めざるを得ないというのが本書を読み終えての感想です。理由は二点。
一点目は、あとがきにもある通り本書の舞台がアイルランドではないこと。本シリーズ最大の特色は、古代アイルランドの世相を描いているところにあると思います。ブリテン(イギリス)を舞台にローマ派とケルト派の両キリスト教派が激論をぶつける様子は、歴史的観点からは大変興味深いのですが、シリーズの特徴が十全に発揮されているとは言いがたいでしょう。
二点目は、言いにくいですがミステリそのものとしての質の問題。フィデルマシリーズの長編については2作を既読ですが、真相の意外性やサスペンス的な展開の妙については、両作とも本書より明らかに勝っていたように感じられます。また、王妹たるフィデルマの権威も、外国が舞台とあってはあまり活かしきれていません。
もっとも、フィデルマとエイダルフが出会うエピソードは、やはり良いです。二人の関係が友人の延長にすぎないのか、あるいは恋愛模様に発展する色合いを見せるのかが、本書を読むことで明らかになったように思います。どっちなんだというところは、ご自身でお確かめいただいたほうが良いでしょう。
本書における「教会会議(シノド)」とは実際に歴史上存在するイベントなのだそうです(ウィットビー教会会議-Wikipedia参照)。史実における大イベントの裏でうごめいていた事件という形で、フィデルマたちの活躍が描かれています。しかし、登場人物のどこまでがフィクションでどこまでが実在の人物なのでしょう。
ケルト派とローマ派ということで、フィデルマとエイダルフはいわばロミオとジュリエット的な立場にあります。そのため、この二人が本格的にコイバナを展開することはないのかと思っていたのですが、その辺りの展開についてのヒントも本書のなかにあるようですね。本書を念頭に既刊も再読してみたいなと思いました。
評価:★★☆☆☆
ピーター・トレメインの関連レビューはこちら
ラベル:
*レビュー,
★2,
ピーター・トレメイン
2011年2月13日日曜日
シンメトリー(誉田哲也)
警部補「姫川玲子」シリーズ第三弾。今回は短編集となっています。派手な事件は少ないですが、ちょっとひと味の利かせ方が抜群の冴えを見せています。非常に満足度の高い一冊です。
玲子のキャラのおかげで警察小説の割りにとても読みやすい本シリーズですが、本書については読後感しんみりしっとりの、読み応えある構成となっています。以下、各話の感想です。
■ 東京
元上司「小暮利充(こぐれとしみつ)」の墓参りに訪れた玲子は「美代子(みよこ)」という少女を見かけます。ともに訪れた未亡人「景子(けいこ)」に請われ、玲子はある事件について語り始めます。なんともしんみりと切ない結末を迎える、玲子駆け出し時代のお話しです。
■ 過ぎた正義
川越少年刑務所。当てもないままに休暇や在庁を利用して何度も足を運んだ末、玲子はとうとう「倉田修二(くらたしゅうじ)」と行き会います。元刑事の彼に対して玲子が話したかったこととは。刑法39条がテーマとなっています。
■ 右では殴らない
女子高生 vs 美人刑事。エンコー女子高生「下坂美樹(しもさかみき)」を玲子がマンツーマンで取り調べる、ちょっと異色な感じの作品です。取調べ中の玲子のぶっちゃけた思惑が克明に描かれています。本書で一番好きな作品。
■ シンメトリー
ある女子高生に対して抱える、駅職員の淡い思い。やりきれない結末を迎えながらも、犯人に対する玲子のとぼけたやりとりが、なんとなくほっとするような後味を残してくれます。
■ 左だけ見た場合
超能力のような技をみせるマジシャン「吉原秀一(よしわらしゅういち)」。調査の結果明らかになった事件の手がかりは、玲子が当初から予想していた通りのものだった。彼女の推理の根拠とは一体なんだったのか。玲子の推理の冴えに加え、ちょっと不思議なオチも印象的な作品。
■ 悪しき実
死体発見の通報をしたまま姿をくらました「春川美津代(はるかわみつよ)」。内縁の夫であった被害者の驚愕すべき正体、そして彼女が姿をくらました理由とは。引きを見る限り、続編へのプロローグ的な位置づけにもなっているのでしょうか。
■ 手紙
玲子が本庁捜査一課に引っ張られるきっかけともなった、若かりし日の事件について語られています。先輩の女刑事による身動きしにくい状況のなか、手柄を求める玲子が目をつけて調べ始めたあるものとは。色々な意味で、女性って怖いねというお話し。
「ジウ」や「ストロベリーナイト」のような派手な展開を期待する向きには物足りなく感じられるかもしれませんが、私としては全編通したしっとり感がとても良かったです。文庫化を待つつもりだった続巻ですが、手を出してしまおうか迷いますね・・・
評価:★★★★☆
玲子のキャラのおかげで警察小説の割りにとても読みやすい本シリーズですが、本書については読後感しんみりしっとりの、読み応えある構成となっています。以下、各話の感想です。
■ 東京
元上司「小暮利充(こぐれとしみつ)」の墓参りに訪れた玲子は「美代子(みよこ)」という少女を見かけます。ともに訪れた未亡人「景子(けいこ)」に請われ、玲子はある事件について語り始めます。なんともしんみりと切ない結末を迎える、玲子駆け出し時代のお話しです。
■ 過ぎた正義
川越少年刑務所。当てもないままに休暇や在庁を利用して何度も足を運んだ末、玲子はとうとう「倉田修二(くらたしゅうじ)」と行き会います。元刑事の彼に対して玲子が話したかったこととは。刑法39条がテーマとなっています。
■ 右では殴らない
女子高生 vs 美人刑事。エンコー女子高生「下坂美樹(しもさかみき)」を玲子がマンツーマンで取り調べる、ちょっと異色な感じの作品です。取調べ中の玲子のぶっちゃけた思惑が克明に描かれています。本書で一番好きな作品。
■ シンメトリー
ある女子高生に対して抱える、駅職員の淡い思い。やりきれない結末を迎えながらも、犯人に対する玲子のとぼけたやりとりが、なんとなくほっとするような後味を残してくれます。
■ 左だけ見た場合
超能力のような技をみせるマジシャン「吉原秀一(よしわらしゅういち)」。調査の結果明らかになった事件の手がかりは、玲子が当初から予想していた通りのものだった。彼女の推理の根拠とは一体なんだったのか。玲子の推理の冴えに加え、ちょっと不思議なオチも印象的な作品。
■ 悪しき実
死体発見の通報をしたまま姿をくらました「春川美津代(はるかわみつよ)」。内縁の夫であった被害者の驚愕すべき正体、そして彼女が姿をくらました理由とは。引きを見る限り、続編へのプロローグ的な位置づけにもなっているのでしょうか。
■ 手紙
玲子が本庁捜査一課に引っ張られるきっかけともなった、若かりし日の事件について語られています。先輩の女刑事による身動きしにくい状況のなか、手柄を求める玲子が目をつけて調べ始めたあるものとは。色々な意味で、女性って怖いねというお話し。
「ジウ」や「ストロベリーナイト」のような派手な展開を期待する向きには物足りなく感じられるかもしれませんが、私としては全編通したしっとり感がとても良かったです。文庫化を待つつもりだった続巻ですが、手を出してしまおうか迷いますね・・・
評価:★★★★☆
2011年2月10日木曜日
妙なる技の乙女たち(小川一水)
シンガポール南東に位置するフィガロ諸島。軌道エレベーターとその周辺経済圏を舞台に、「働く女性」をテーマとした近未来SF短編集です。全8話、これほど好みの作品ばかり揃うのも珍しいかもしれません。
SF的には良く扱われる題材かと思いますが、海上タクシーや保母さんなど周辺部を支える職業にスポットをあてられているのが面白いです。以下、各話の感想です。
■ 天上のデザイナー
うだつの上がらないやんちゃな女性デザイナー「京野歩(きょうのすすむ)」が、宇宙服デザインのコンペに挑むお話し。なぜ宇宙服はあれほど不恰好なのか?彼女を支える男達が、格好いいような悪いような良い味出してます。
■ 港のタクシー艇長(スキッパー)
父の遺した舟で海上タクシーを営む「歌島水央(うたじまみずお)」。男社会のなか気を張り詰める彼女に対して、いつものごとく引退を勧めるメッツラー少将。二人きりの気詰まりなクルージングのなかで事件は起こります。メッツラーおじさん、超格好いいです。
■ 楽園の島、売ります
環境保護区を住宅地として売り出す不動産業者「幡森香奈江(はたもりかなえ)」と、そのパートナーにして進化生態学の専門家「ルクレース・マッキンデール」。二人の意見が対立するある物件が、徐々にきな臭い様相を見せていきます。女性二人の大人な友情物語。
■ セハット・デイケア保育日誌
緩い雰囲気の保育施設になんとなく居ついてしまった保育士「阪奈麻子(ハンナアサコ)」。子供達のなかにいつの間にか紛れ込んでいた、不思議な雰囲気を持つ金髪少年「レオン」との心温まる交流物語。宗教の違いに基づく食事の準備が大変なのだそうです。なるほど。
■ Lift me to the Moon
体調不良者の変わりに急なリリーフで軌道エレベーターに乗り込むこととなった派遣アテンダント「犬井麦穂(いぬいむぎほ)」。初配乗ながらも優秀な働きを見せる彼女ですが、なにやら秘めた事情を抱えている模様。一番ミステリ色の濃い話かもしれません。
■ あなたに捧げる、この腕を
機械の腕を使ったアーマート(ArmArt)の先駆者「鹿沼里径(かぬまさとみ)」。あるクライアント男性と良い雰囲気になりかけるなかで、芸術家としての彼女が見せる我侭とは。第一話ヒロインの京野歩も、成長した姿を見せてくれます。
■ The Lifestyles of Of Human-Beings At Spaces
軌道エレベーターを営む巨大企業CANTEC。CEO「マダム・ハービンジャー」直々に声を掛けられた「歌島美旗(うたじまみき)」が、相棒の「ギルバート・マッキンデール」とともに、宇宙空間での食料事情改善に奔走します。明言されていませんが、名前の通りある人物の娘と息子のようです。
■ 宇宙で一番丈夫な糸 -The Ladies who have amazing skills at 2030.
CANTEC社CEO「アリッサ・ハービンジャー」若かりし日のお話し。究極の繊維材料に関する技術を出し渋る青年「バンブラスキ・エイブラハム・チーズヘッド」との直接交渉に挑んだ彼女が見せる粘り腰の交渉術。文庫書き下ろし作品だそうです。
どれも爽やかな後味を残す快作ばかりです。地に足ついた感じの雰囲気がよいですね。SF的設定の妙と物語としての面白さが絶妙にブレンドされていて、とても私好みな作品集でした。
評価:★★★★★
SF的には良く扱われる題材かと思いますが、海上タクシーや保母さんなど周辺部を支える職業にスポットをあてられているのが面白いです。以下、各話の感想です。
■ 天上のデザイナー
うだつの上がらないやんちゃな女性デザイナー「京野歩(きょうのすすむ)」が、宇宙服デザインのコンペに挑むお話し。なぜ宇宙服はあれほど不恰好なのか?彼女を支える男達が、格好いいような悪いような良い味出してます。
■ 港のタクシー艇長(スキッパー)
父の遺した舟で海上タクシーを営む「歌島水央(うたじまみずお)」。男社会のなか気を張り詰める彼女に対して、いつものごとく引退を勧めるメッツラー少将。二人きりの気詰まりなクルージングのなかで事件は起こります。メッツラーおじさん、超格好いいです。
■ 楽園の島、売ります
環境保護区を住宅地として売り出す不動産業者「幡森香奈江(はたもりかなえ)」と、そのパートナーにして進化生態学の専門家「ルクレース・マッキンデール」。二人の意見が対立するある物件が、徐々にきな臭い様相を見せていきます。女性二人の大人な友情物語。
■ セハット・デイケア保育日誌
緩い雰囲気の保育施設になんとなく居ついてしまった保育士「阪奈麻子(ハンナアサコ)」。子供達のなかにいつの間にか紛れ込んでいた、不思議な雰囲気を持つ金髪少年「レオン」との心温まる交流物語。宗教の違いに基づく食事の準備が大変なのだそうです。なるほど。
■ Lift me to the Moon
体調不良者の変わりに急なリリーフで軌道エレベーターに乗り込むこととなった派遣アテンダント「犬井麦穂(いぬいむぎほ)」。初配乗ながらも優秀な働きを見せる彼女ですが、なにやら秘めた事情を抱えている模様。一番ミステリ色の濃い話かもしれません。
■ あなたに捧げる、この腕を
機械の腕を使ったアーマート(ArmArt)の先駆者「鹿沼里径(かぬまさとみ)」。あるクライアント男性と良い雰囲気になりかけるなかで、芸術家としての彼女が見せる我侭とは。第一話ヒロインの京野歩も、成長した姿を見せてくれます。
■ The Lifestyles of Of Human-Beings At Spaces
軌道エレベーターを営む巨大企業CANTEC。CEO「マダム・ハービンジャー」直々に声を掛けられた「歌島美旗(うたじまみき)」が、相棒の「ギルバート・マッキンデール」とともに、宇宙空間での食料事情改善に奔走します。明言されていませんが、名前の通りある人物の娘と息子のようです。
■ 宇宙で一番丈夫な糸 -The Ladies who have amazing skills at 2030.
CANTEC社CEO「アリッサ・ハービンジャー」若かりし日のお話し。究極の繊維材料に関する技術を出し渋る青年「バンブラスキ・エイブラハム・チーズヘッド」との直接交渉に挑んだ彼女が見せる粘り腰の交渉術。文庫書き下ろし作品だそうです。
どれも爽やかな後味を残す快作ばかりです。地に足ついた感じの雰囲気がよいですね。SF的設定の妙と物語としての面白さが絶妙にブレンドされていて、とても私好みな作品集でした。
評価:★★★★★
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