北森鴻の遺した唯一のジュブナイルなのだそうです。小学3年生の「鷹坂ちあき」を主人公としたミステリ連作短編集。「電脳」の設定などはいかにも子供向けといった感じですが、肝心のミステリトリックがなかなか油断ならないのは流石です。
本書は雑誌「小学三年生」に連載されていた「ちあき電脳探てい社」を文庫化したものだとか。掲載時期は1996年4月~1997年3月と、かなり昔の作品です。150ページ弱でフォントも大きめ。このボリュームで一冊にするのは、筆者が亡くなったタイミングでなければ難しかったのかもしれません。
転校してきたちあきとご近所になった同級生「井沢コウスケ」の一人称で語られています。
電脳の設定はちょっと微妙な感じかもしれません。凄いコンピュータにゴーグルで接続して何とかかんとか。正直、文字通りの「子供だまし」といった印象ではありますが、そもそも子供向けなのですから当たり前です。
実のところ、ちあきは素の状態でもかなり名探偵なので、電脳設定の意味については私にはいまいちピンときませんでした。
ところがその設定、話を重ねるに連れてだんだん影が薄くなっていっちゃいます。そして何故か、それに比例して物語のクオリティが上がっていっているような・・・なんとも皮肉感じです(^^;
もっともミステリ的な仕掛け自体は、1話目から結構うならされました。流石は短編の名手。あるいは私の読者としてのレベルが小学三年生並というだけかもしれませんが。
ちなみにちあきとコウスケはともに片親で、お互いの親同士がなんとなくいい雰囲気になったりします。これ、うまく転べば二人は義理の兄妹なんですよね。なんとも美味しい設定。5年後くらいの続編が読みたかったです。
子供向けということに目をつむれば、それなりに楽しめる作品ではないかと思います。芦辺拓さんによるあとがきも興味深いですし、北森鴻さんのファンであれば読んでみて損することは無いかと思います。
評価:★★★☆☆
2011年2月18日金曜日
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