いかにもガガガ文庫らしい、と言えるほど同レーベルを読み込んでいるわけではないのですが、田中ロミオさんの「AURA」を重くしたような話、と言えば雰囲気が伝わるでしょうか。怪作です。
宗教やいじめを題材としたサスペンス仕立てとなっています。後半は本当にドキドキが止まりませんでした。派手さのない淡々とした展開が逆に怖いというか・・・
主人公「郁(いく)」と幼なじみ「常磐(ときわ)」のちょっぴりほの甘い日常が、タロットの得意な元いじめられっこ「七瀬(ななせ)」の登場で急展開していきます。
そしてクラス内のヒエラルキー崩壊。諸々の事情が収斂されていくクライマックスは、圧巻というのとも何か違う、冷たいものが少しずつ染み入るような感覚といったらよいでしょうか。
テーマ的に「AURA」と似通ったところもあるのですけれど、あちらがロミオ氏の諧謔のお陰で結構息を抜く余裕があるのに対し、本作は生々しさをストレートに見せつけてくれています。
左翼活動家の女教師「間宮(まみや)」が、面白い立ち位置で活躍してくれます。彼女が結構格好良かったりするので、右側の端っこの方にいる人は本書をさけた方が無難かもしれません。
ただ、宗教や左翼といった思想的なところについては、ニュートラルというよりかなりぶっちゃけた皮肉が入っている感じなので、それほど警戒を要するものでもないとは思います。
重いテーマをあつかってはいるものの、筆者の視点がクールでストーリー自体も軽快に進むので、読みにくいということは全くありませんでした。一作目の「ストレンジボイス (ガガガ文庫)」も似た傾向の作品のようなので、是非チャレンジしてみたいと思っています。
評価:★★★★★
2011年2月27日日曜日
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