筆者の作品は異世界ファンタジーしか読んだことないのですが、本書は現代日本が舞台となっています。とはいえ、主人公はある意味とてもファンタジー。探偵さん自身の能力がミステリーという一風変わった作品ですが、軽快に読ませてくれてなかなか楽しめました。
一応探偵事務所を構えてはいるものの、やる気のなさ全開の探偵「百乃喜 太郎(もものき たろう)」。彼には推理力も調査力も腕力も何も備わっていませんが、ある能力(体質?)により一部関係者からは渋い顔をされながらも重宝されています。
ぐうたらな彼ひとりでは何も話が動きません。彼を取り巻く美人秘書と4人の幼馴染達(弁護士、公務員、格闘家、役者)が、百乃喜の能力を駆使して事件の捜査に乗り出します。
その能力自体は一応伏せますが、設定自体は結構ありそうなものかもしれません。本書の主眼はむしろ美人秘書や取り巻き立ちのキャラクタにあるといってよいでしょう。どれもこれも一癖ある人物ばかりで読んでいて楽しいです。
あえて難をあげるとすれば、みんなちょっとできすぎなキャラというところですかね。主人公の取り巻きはもちろん、事件に関わる人物がみなキレイ過ぎな感じ。もちろんそれは長所にもなりうる点で、人によって評価の分かれるところでしょう。
伏線は色々仕込まれているようです。大富豪で、散々恐ろしがられている大家の「銀子」さんも直接は登場せず、主人公や友人達の周辺にも興味深いネタが色々隠されていそうなので、次巻以降が楽しみです。
評価:★★☆☆☆
2010年12月16日木曜日
2010年12月15日水曜日
ローマ人の物語〈31〉終わりの始まり〈下〉(塩野七生)
賢帝の世紀が終わり混乱の時代に突入。冒頭いきなり5人もの肖像を見せられどんな乱世になるかと思いましたが、帝位争い自体はそれなりの形で収束します。問題はその後です。
帝位争いをする各人への筆者の評価は厳しすぎるようにも思えますが、大帝国ローマを支える資質というのはやはりそれなりのものが必要とされるのでしょうか。トライアヌスやハドリアヌスのようなレベルでないと支えきれない政体自体、無理があるのかもしれません。
暗殺された先帝コモドゥスの後釜として推挙された「ペルティナクス」は、叩き上げの軍人でなんと解放奴隷の息子です。ローマの実力主義ここに極まれりといった感じですが、彼の出自自体への反発はなかったようです。近衛長官「レトー」の私欲から来る造反により、わずか3ヶ月で暗殺。
筆者はレトーへの配慮を欠いた結果だと厳しいですが、正直その言いようはあまりに酷な気がします。どう考えても悪いのは短慮なレトー。コモドゥスにより荒らされた国の建て直しに真摯かつ公正に臨もうとした結果だと思うので。でも、古くから血で血を洗う闘争が続けられているローマでは、そのような慎重さも絶対不可欠な資質ということなのでしょう。
大義名分のある後継者をなくし、時代は4人の軍人による権力争いへと突入します。最終的な勝利を収めた「セプティミウス」にあって、他の3人になかったのは「容赦の無さ」だったらしいです。特筆すべきは4人ともが優れた実績を持つ人格者であった点。私利の強く出ていた日本の戦国時代とはかなり様相が違います。
他の3人がローマ人らしさにこだわる隙をついた格好になった「セプティミウス」。彼への私の印象は、小野不由美さん「十二国記」に登場する泰王「驍宗(ぎょうそう)」です。本人に悪意はなく、実力もありカリスマも備えるけれど、あまりに果断なやりかたに徐々に周りとの齟齬が出てくるような・・・
全ては良かれと思って行った軍人への待遇向上がローマの空気を一変することになります。専門軍人の台頭によるきな臭い時代の到来。そして時代は彼の息子にして次期皇帝、悪名高き「カラカラ」に引き継がれていくことになります。
評価:★★★☆☆
帝位争いをする各人への筆者の評価は厳しすぎるようにも思えますが、大帝国ローマを支える資質というのはやはりそれなりのものが必要とされるのでしょうか。トライアヌスやハドリアヌスのようなレベルでないと支えきれない政体自体、無理があるのかもしれません。
暗殺された先帝コモドゥスの後釜として推挙された「ペルティナクス」は、叩き上げの軍人でなんと解放奴隷の息子です。ローマの実力主義ここに極まれりといった感じですが、彼の出自自体への反発はなかったようです。近衛長官「レトー」の私欲から来る造反により、わずか3ヶ月で暗殺。
筆者はレトーへの配慮を欠いた結果だと厳しいですが、正直その言いようはあまりに酷な気がします。どう考えても悪いのは短慮なレトー。コモドゥスにより荒らされた国の建て直しに真摯かつ公正に臨もうとした結果だと思うので。でも、古くから血で血を洗う闘争が続けられているローマでは、そのような慎重さも絶対不可欠な資質ということなのでしょう。
大義名分のある後継者をなくし、時代は4人の軍人による権力争いへと突入します。最終的な勝利を収めた「セプティミウス」にあって、他の3人になかったのは「容赦の無さ」だったらしいです。特筆すべきは4人ともが優れた実績を持つ人格者であった点。私利の強く出ていた日本の戦国時代とはかなり様相が違います。
他の3人がローマ人らしさにこだわる隙をついた格好になった「セプティミウス」。彼への私の印象は、小野不由美さん「十二国記」に登場する泰王「驍宗(ぎょうそう)」です。本人に悪意はなく、実力もありカリスマも備えるけれど、あまりに果断なやりかたに徐々に周りとの齟齬が出てくるような・・・
全ては良かれと思って行った軍人への待遇向上がローマの空気を一変することになります。専門軍人の台頭によるきな臭い時代の到来。そして時代は彼の息子にして次期皇帝、悪名高き「カラカラ」に引き継がれていくことになります。
評価:★★★☆☆
2010年12月11日土曜日
サクラダリセット4 GOODBYE is not EASY WORD to SAY(河野裕)
今回は短編集だからと軽い気持ちでいたら、やはりなかなか侮れませんでした。特にお見舞いの話と「ホワイトパズル」が秀逸。後者はシリーズ外の作品ですが、同じ超能力物なので違和感なく読めました。
色々な超能力に絡む問題を解決していくという設定は、西澤保彦さんの「神麻嗣子シリーズ」にちょっと似ていますね。このシリーズ、結構短編向きな気がします。以下、各話の感想です。
■ ビー玉世界とキャンディーレジスト
「浅井ケイ」と「春埼美空(はるきみそら)」の高校における奉仕クラブデビュー戦。ビー玉のなかに閉じ込められた少女を助けるお話しです。自分から無意識に飛び込んで出られないとか、これほど使えない超能力というのも珍しいんじゃないかと思います(^^;
■ ある日の春埼さん -お見舞い編-
掌編。クールというよりは無感情な春埼さんですが、ケイの入院に際しお見舞いに行くようクラスメートの「皆実未来(みなみみらい)」に炊きつけられます。恋愛感情なにそれ?な感じなのに、その行動ははにかむ少女以外の何者でもないという、ギャップ萌えラブコメの傑作です。
■ 月の砂を取りにいった少年の話
クールに猫と戯れる少女「野ノ尾盛夏(ののおせいか)」との出会い編。盛夏の気を引こうとする少年「日下部翔太(くさかべしょうた)」君の不遇っぷりに涙を禁じえません。メインのネタがちょっとアンフェアっぽいなと思ったけど、良く考えたらミステリじゃなかったですね。というくらい話の骨格がミステリっぽいのです。
■ ある日の春埼さん -友達作り編-
掌編。ケイに言われて盛夏と友達になりにきた春埼。色々間違っていますが、そんな彼女と波長のあう盛夏も色々壊れています。小説のなかの美少女は空気を読まなくても許されるのが羨ましいですね。
■ Strapping / Goodbye is not an easy word to say
なぜ春埼はケイに命じられないとリセットを使えなくなったのか。「相麻菫(そうますみれ)」が死亡した直後のお話しです。わけありげなお姉さん「宇川沙々音(うかわささね)」さんの登場は今後への伏線でしょうか。柵を作る能力というのも謎ですが、キットカットやコアラのマーチが好きみたいなので悪い人ではないのでしょう。
■ ホワイトパズル
シリーズ外作品。いわゆる「時をかける少女」ものですが、単に時を跳ぶのでなく、互いの時間の自分が入れ替わるという設定がユニークです。メインのオチ自体は予測できるものなのですが、話の持っていきかたや収束の仕方が素晴らしいです。
短編集ということで「大きな物語」が抑え気味な分、個々のキャラクタに焦点が当たっているのが嬉しいところです。超能力物としての設定自体もお見事。このシリーズ、短編ものなら延々と続けられそうなんですが、そういう感じでうまいことシリーズまわして欲しいですね。
評価:★★★★☆
関連レビュー:
サクラダリセット3 MEMORY in CHILDLEN(河野 裕)
色々な超能力に絡む問題を解決していくという設定は、西澤保彦さんの「神麻嗣子シリーズ」にちょっと似ていますね。このシリーズ、結構短編向きな気がします。以下、各話の感想です。
■ ビー玉世界とキャンディーレジスト
「浅井ケイ」と「春埼美空(はるきみそら)」の高校における奉仕クラブデビュー戦。ビー玉のなかに閉じ込められた少女を助けるお話しです。自分から無意識に飛び込んで出られないとか、これほど使えない超能力というのも珍しいんじゃないかと思います(^^;
■ ある日の春埼さん -お見舞い編-
掌編。クールというよりは無感情な春埼さんですが、ケイの入院に際しお見舞いに行くようクラスメートの「皆実未来(みなみみらい)」に炊きつけられます。恋愛感情なにそれ?な感じなのに、その行動ははにかむ少女以外の何者でもないという、ギャップ萌えラブコメの傑作です。
■ 月の砂を取りにいった少年の話
クールに猫と戯れる少女「野ノ尾盛夏(ののおせいか)」との出会い編。盛夏の気を引こうとする少年「日下部翔太(くさかべしょうた)」君の不遇っぷりに涙を禁じえません。メインのネタがちょっとアンフェアっぽいなと思ったけど、良く考えたらミステリじゃなかったですね。というくらい話の骨格がミステリっぽいのです。
■ ある日の春埼さん -友達作り編-
掌編。ケイに言われて盛夏と友達になりにきた春埼。色々間違っていますが、そんな彼女と波長のあう盛夏も色々壊れています。小説のなかの美少女は空気を読まなくても許されるのが羨ましいですね。
■ Strapping / Goodbye is not an easy word to say
なぜ春埼はケイに命じられないとリセットを使えなくなったのか。「相麻菫(そうますみれ)」が死亡した直後のお話しです。わけありげなお姉さん「宇川沙々音(うかわささね)」さんの登場は今後への伏線でしょうか。柵を作る能力というのも謎ですが、キットカットやコアラのマーチが好きみたいなので悪い人ではないのでしょう。
■ ホワイトパズル
シリーズ外作品。いわゆる「時をかける少女」ものですが、単に時を跳ぶのでなく、互いの時間の自分が入れ替わるという設定がユニークです。メインのオチ自体は予測できるものなのですが、話の持っていきかたや収束の仕方が素晴らしいです。
短編集ということで「大きな物語」が抑え気味な分、個々のキャラクタに焦点が当たっているのが嬉しいところです。超能力物としての設定自体もお見事。このシリーズ、短編ものなら延々と続けられそうなんですが、そういう感じでうまいことシリーズまわして欲しいですね。
評価:★★★★☆
関連レビュー:
サクラダリセット3 MEMORY in CHILDLEN(河野 裕)
2010年12月10日金曜日
隻眼の少女(麻耶雄嵩)
苦悩にあえぐ美少女が好きな方にお勧め。名探偵というより迷探偵じゃないのかなんて思っていたらとんでもなかったです。レトロな舞台装置によるトリッキーな仕掛け。麻耶氏の作品を読むのは10年ぶりくらいですが、いかにも筆者らしいなあと懐かしく感じました。
物語は1985年と2003年の二部構成となります。どちらも主人公は「御陵(みささぎ)みかげ」と「種田静馬(たねだしずま)」のコンビですが、15年を隔ててどのようなシチュエーションになるかは、実際に読んでみてのお楽しみです。
母の名を継ぎ「名探偵」を目指すみかげと、複雑な家庭事情により自殺願望を持つ静馬の出会いは、ちょっとしたボーイミーツガールです。ただし、当然のように甘酸っぱいばかりの展開にはなりません。
名探偵が全然役に立たない、というよりむしろ災厄を呼び起こしているように感じられるのは、筆者が意識的にそう描いているからだと思います。なんだか露骨過ぎる気もしましたが、最後の解決編をよんでそのあたりは納得できました。
後味の良い作品と言えるかどうかは微妙なところです。美少女の笑顔で締めくくられるとなれば普通は大団円としたものですが、そこに妙な落ち着かなさを感じさせるのも流石といって良いのかどうか(^^;
大筋のトリックや話の流れについては文句ないのですが、細かいところの描写で若干の齟齬を感じるのは、単に私の読みが浅いためでしょうか。なんだか色々無理があるような気はしたのですが、そもそも仕掛け重視のミステリでそのあたりを突っ込むのが無粋なのかもしれません。
美少女探偵としてのみかげのキャラクターには文句なしです。是非続編が読みたいですね。クールなツンデレ探偵をもっと読みたくて仕方ないという方のため、以下の作品も紹介しておきます。
第2部ではデレ気味のみかげよりも、「斎宮瞑」のほうがツンデレ度では勝ってると思いますよ(笑)
評価:★★★★☆
物語は1985年と2003年の二部構成となります。どちらも主人公は「御陵(みささぎ)みかげ」と「種田静馬(たねだしずま)」のコンビですが、15年を隔ててどのようなシチュエーションになるかは、実際に読んでみてのお楽しみです。
母の名を継ぎ「名探偵」を目指すみかげと、複雑な家庭事情により自殺願望を持つ静馬の出会いは、ちょっとしたボーイミーツガールです。ただし、当然のように甘酸っぱいばかりの展開にはなりません。
名探偵が全然役に立たない、というよりむしろ災厄を呼び起こしているように感じられるのは、筆者が意識的にそう描いているからだと思います。なんだか露骨過ぎる気もしましたが、最後の解決編をよんでそのあたりは納得できました。
後味の良い作品と言えるかどうかは微妙なところです。美少女の笑顔で締めくくられるとなれば普通は大団円としたものですが、そこに妙な落ち着かなさを感じさせるのも流石といって良いのかどうか(^^;
大筋のトリックや話の流れについては文句ないのですが、細かいところの描写で若干の齟齬を感じるのは、単に私の読みが浅いためでしょうか。なんだか色々無理があるような気はしたのですが、そもそも仕掛け重視のミステリでそのあたりを突っ込むのが無粋なのかもしれません。
美少女探偵としてのみかげのキャラクターには文句なしです。是非続編が読みたいですね。クールなツンデレ探偵をもっと読みたくて仕方ないという方のため、以下の作品も紹介しておきます。
第2部ではデレ気味のみかげよりも、「斎宮瞑」のほうがツンデレ度では勝ってると思いますよ(笑)
評価:★★★★☆
2010年12月7日火曜日
放課後探偵団(相沢沙呼, 市井豊, 鵜林伸也, 梓崎優, 似鳥鶏)
好きな作家を追いかけるタイプの私としては、複数作家によるアンソロジーという形式はあまり好きではないのですが、今回は似鳥鶏さんの新作がどうしても読みたくて手にとってみました。大きなはずれのない作品集だったのでほっとしましたが、やはり雑多なのはあまり好みではないかもしれません・・・
タイトルからして学園物ばかりかと思いきや、大学生や果ては三十路のオッサンが主人公の渋い作品まで紛れ込んでいます。似鳥さん以外では、梓崎優さんの作品を読めたのは収穫ですかね。以下、各話の感想です。
■ 似鳥鶏「お届け先には不思議を添えて」
柳瀬先輩も翠も登場しない代わりに妹がちょい役で出てきてヒロイン分を補ってくれます。食事シーンには性格が現われる?ミステリとしてもなかなか良かったです。
■ 鵜林伸也「ボールがない」
何か色々と無理がありそうな話という気はしましたが、公立の高校野球強豪校という舞台は門外漢として興味深い設定でした。長編でじっくり話を作ってもらった方が味が出そうな印象。
■ 相沢沙呼「恋のおまじないのチンク・ア・チンク」
「午前零時のサンドリヨン」のシリーズだそうです。噂には聞いてましたが、この主人公は結構読む人を選びそうですね。私は駄目でした。こういうタイプの少年主人公は、同性視点からだとちょっとしんどい気がします。
■ 市井豊「横槍ワイン」
ちょっぴりご都合主義な結末。でもそれがいいですね。ミステリとしてのリアリティはともかく、骨格がしっかりしてるのが好印象。何作か雑誌で掲載されている「聴き屋」シリーズの作品なのだそうです。近々本になりそうなので、これは買うかもしれません。
■ 梓崎優「スプリング・ハズ・カム」
ミステリとしてフェアなのかどうかは微妙ですが、本書で一番「おっ」とさせられた作品。短編という制約のなかでこれだけしっかり伏線が練りこまれているのはお見事。評判のよい「叫びと祈り」にも俄然関心がわいてきました。
それなりに収穫は多かったものの、やはりアンソロジーへの苦手意識はぬぐえずじまい。個々の作品がどうこうと言うより、流れが断ち切られるような感じがしてしまうのですね。私は本読みとして視野が狭すぎるのかもしれません。
評価:★★☆☆☆
タイトルからして学園物ばかりかと思いきや、大学生や果ては三十路のオッサンが主人公の渋い作品まで紛れ込んでいます。似鳥さん以外では、梓崎優さんの作品を読めたのは収穫ですかね。以下、各話の感想です。
■ 似鳥鶏「お届け先には不思議を添えて」
柳瀬先輩も翠も登場しない代わりに妹がちょい役で出てきてヒロイン分を補ってくれます。食事シーンには性格が現われる?ミステリとしてもなかなか良かったです。
■ 鵜林伸也「ボールがない」
何か色々と無理がありそうな話という気はしましたが、公立の高校野球強豪校という舞台は門外漢として興味深い設定でした。長編でじっくり話を作ってもらった方が味が出そうな印象。
■ 相沢沙呼「恋のおまじないのチンク・ア・チンク」
「午前零時のサンドリヨン」のシリーズだそうです。噂には聞いてましたが、この主人公は結構読む人を選びそうですね。私は駄目でした。こういうタイプの少年主人公は、同性視点からだとちょっとしんどい気がします。
■ 市井豊「横槍ワイン」
ちょっぴりご都合主義な結末。でもそれがいいですね。ミステリとしてのリアリティはともかく、骨格がしっかりしてるのが好印象。何作か雑誌で掲載されている「聴き屋」シリーズの作品なのだそうです。近々本になりそうなので、これは買うかもしれません。
■ 梓崎優「スプリング・ハズ・カム」
ミステリとしてフェアなのかどうかは微妙ですが、本書で一番「おっ」とさせられた作品。短編という制約のなかでこれだけしっかり伏線が練りこまれているのはお見事。評判のよい「叫びと祈り」にも俄然関心がわいてきました。
それなりに収穫は多かったものの、やはりアンソロジーへの苦手意識はぬぐえずじまい。個々の作品がどうこうと言うより、流れが断ち切られるような感じがしてしまうのですね。私は本読みとして視野が狭すぎるのかもしれません。
評価:★★☆☆☆
2010年12月6日月曜日
みんなのふこう(若竹七海)
不幸体質でありながら天真爛漫な17歳のフリーター「ココロちゃん」。彼女が遭遇する数々の事件を第三者視点から語り継いで行く、異色の連作短編ミステリーです。葉崎市シリーズの既刊を読んでいなくても問題ありませんが、猫島や角田先生など、知ってるとニヤリとできるネタは結構あるかもしれません。
物語の最初の半分は、葉崎FMの人気コーナー「みんなの不幸」が舞台となります。ココロちゃんの友人だという<ココロちゃんのぺんぺん草>さんによる投稿が、ココロちゃんブームを巻き起こしますが、物語はやがてきな臭い方向へ。
後半では一転、病院会報やら新聞記事やらメールのやり取りやら作家のコラムやら、様々な方向に視点が切り替わり飽きさせません。シリーズではおなじみの作家「角田広大」夫妻も割りとコアなかたちで話に絡んでくるのは嬉しいところです。
本書の最大の魅力はもちろん「ココロちゃん」のパーソナリティ。度々不幸に見まわれる可哀想な子でありながら、天然な性格のため全く陰惨さを感じさせません。後から考えると「プラスマイナスゼロ」のテンコと設定が被ってますが、キャラ付けが大分違うので、読んでる最中は気になりませんでした。
ヒロインでありながら彼女が直接出てくることは一度もないのが面白いところです。他の人間が語るエピソードのなかでの間接的な登場に終始します。こういう設定のミステリだと色々警戒心も沸きそうですが、本作に関してはあまり考えず素直に楽しんだほうが良いのではないかと思います。
話の顛末は若干あっさり目な印象でしたが、作品の雰囲気的にはぴったりなラストだったという気もします。筆者ならではの毒も軽快な雰囲気のおかげで程よいスパイスに。構えず気楽に楽しめる一冊です。
評価:★★★☆☆
関連レビュー:
プラスマイナスゼロ(若竹七海)
物語の最初の半分は、葉崎FMの人気コーナー「みんなの不幸」が舞台となります。ココロちゃんの友人だという<ココロちゃんのぺんぺん草>さんによる投稿が、ココロちゃんブームを巻き起こしますが、物語はやがてきな臭い方向へ。
後半では一転、病院会報やら新聞記事やらメールのやり取りやら作家のコラムやら、様々な方向に視点が切り替わり飽きさせません。シリーズではおなじみの作家「角田広大」夫妻も割りとコアなかたちで話に絡んでくるのは嬉しいところです。
本書の最大の魅力はもちろん「ココロちゃん」のパーソナリティ。度々不幸に見まわれる可哀想な子でありながら、天然な性格のため全く陰惨さを感じさせません。後から考えると「プラスマイナスゼロ」のテンコと設定が被ってますが、キャラ付けが大分違うので、読んでる最中は気になりませんでした。
ヒロインでありながら彼女が直接出てくることは一度もないのが面白いところです。他の人間が語るエピソードのなかでの間接的な登場に終始します。こういう設定のミステリだと色々警戒心も沸きそうですが、本作に関してはあまり考えず素直に楽しんだほうが良いのではないかと思います。
話の顛末は若干あっさり目な印象でしたが、作品の雰囲気的にはぴったりなラストだったという気もします。筆者ならではの毒も軽快な雰囲気のおかげで程よいスパイスに。構えず気楽に楽しめる一冊です。
評価:★★★☆☆
関連レビュー:
プラスマイナスゼロ(若竹七海)
2010年12月2日木曜日
スタイルズ荘の怪事件(アガサ・クリスティー)
デビュー作のためか、クライマックスの展開は少しこなれない印象を感じなくもありませんが、事件の過程やポアロのキャラクタは流石に魅力的です。それにしても、ヘイスティングズ・・・
今まで全然読んでなかったポアロ物。有名作だけ抑えるつもりでしたが、アクロイド殺しがネタバレくらっていたにもかかわらずかなり面白かったので、初っ端からチャレンジしてみることにしました。
ミステリ部分は正直どうなのかなという印象。意外性はありましたけど、フェアなのかどうか良く分かりませんでした。もっとも、結構読み流してたのでちゃんと読めばそうでもないのかもしれません。
ただ、ポアロの愛すべきキャラについては、本書で既に確立されてるような気がします。まだ他に一冊しか読んでないのでわかりませんけれども。このキャラが楽しめるようになったのは、自分が年取った証拠かなという気もします(^^;
それにつけてもヘイスティングズ。ワトソン役は落とされるのが役目とはいえ、この道化っぷりはあまりに酷すぎます(笑)。彼への評価がこの作品の評価に直結しそうですね。ある意味可愛いキャラで、これがお約束と思えば受け入れられるかもしれませんが、私はいたたまれなさの方をより感じてしまったかも・・・
私的に本書は、ミステリ10%、ポアロ30%、ヘイスティングズ60%の作品。ヘイスティングズのキャラ自体は好きですが、三枚目ぶりがあまりにあまりなのはちょっぴりマイナスです。ただし、続巻に挑む気持ちは一層増してきました。
評価:★★☆☆☆
今まで全然読んでなかったポアロ物。有名作だけ抑えるつもりでしたが、アクロイド殺しがネタバレくらっていたにもかかわらずかなり面白かったので、初っ端からチャレンジしてみることにしました。
ミステリ部分は正直どうなのかなという印象。意外性はありましたけど、フェアなのかどうか良く分かりませんでした。もっとも、結構読み流してたのでちゃんと読めばそうでもないのかもしれません。
ただ、ポアロの愛すべきキャラについては、本書で既に確立されてるような気がします。まだ他に一冊しか読んでないのでわかりませんけれども。このキャラが楽しめるようになったのは、自分が年取った証拠かなという気もします(^^;
それにつけてもヘイスティングズ。ワトソン役は落とされるのが役目とはいえ、この道化っぷりはあまりに酷すぎます(笑)。彼への評価がこの作品の評価に直結しそうですね。ある意味可愛いキャラで、これがお約束と思えば受け入れられるかもしれませんが、私はいたたまれなさの方をより感じてしまったかも・・・
私的に本書は、ミステリ10%、ポアロ30%、ヘイスティングズ60%の作品。ヘイスティングズのキャラ自体は好きですが、三枚目ぶりがあまりにあまりなのはちょっぴりマイナスです。ただし、続巻に挑む気持ちは一層増してきました。
評価:★★☆☆☆
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