巨匠アシモフの手による「銀河帝国」ものなわけですが、いわゆる王道っぽいイメージからは随分外れた作品ではないかと思います。宇宙艦隊による戦闘シーンなどはあくまで二の次。主人公達が機知機略を駆使して難局を乗り越えていくのがシリーズを通した主眼となっています。
邦題サブタイトルからも予測できるかもしれませんが、本書はギボンの有名な歴史書「ローマ帝国衰亡史」から着想を得ているのだそうです。とりわけ1巻については、プランの歴史的転換点を拾い上げる形の連作5話構成になっていて、次々と年代が移り変わっていく軽快感が読者を飽きさせません。
間違いなくシリーズの中核をなしているのが「セルダン・プラン」という名の神の手的予定調和。私なりに各巻に副題をつけるとすれば、
- 偉大なるセルダン・プラン
- セルダン・プランの危機
- セルダン・プランの克服
セルダンの駆使した「心理歴史学」というのは、1巻のP28から引用すると、
一定の社会的・経済的刺激に対する人間集団の反応を扱う数学の一分野であり、
扱われる人間集団が有効な統計処理を受けられるだけの十分な大きさを持っているという仮定が、その前提条件になっているとのことです。未来予測というといかにも胡散臭げですが、結局それをある一定の大きさを持つ集団にしか適用できないとすることで、もっともらしさを出しているわけです。
そして、集団という没個性を扱っているだけでは予測不可能な「ミュール」という異能力者の登場により、プランは壊滅的な危機の縁に立たされてしまいます。
マクロな視点の危機を克服する平凡な一女性の機知。さらにはセルダン・プラン自体に備えられていた危機対処手段としての「第2ファウンデーション」の実体。
予定調和的な作品にありがちな退屈さを絶妙なタイミングで崩してくるところに本書のストーリー展開としての妙がありますが、かといって「セルダン・プラン」という権威に対するカタルシスが失われるわけでもありません。
この辺りのバランス感覚こそが、本シリーズが支持されている一番の理由ではないかと思います。アシモフは読者が何を喜ぶのかについての配慮がつくづく行き届いているようです。
今回ご紹介した3部作は1950年ごろに発表されたもので、私自身が最初に読んだのも今から20年ほど前の高校生時代です。今回改めて読み返してみて、科学技術的なところはともかくストーリーの面白さは全く色あせていないなと感じました。
正直なところ、若干技巧に走りすぎて物語の凄みという点で損をしているかなというところもなくはないのですが、約30年を隔てて発表された第4巻「ファウンデーションの彼方へ」ではその辺りも克服した全く異種の作品に仕上がっていますので、興味をもたれた方には是非ご一読いただきたいです。
評価:★★★★☆