2010年5月7日金曜日

「日本経済の真実―ある日、この国は破産します」(辛坊治郎、辛坊正記) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

ズームインでおなじみ辛坊治郎さんの著作です(お兄さんと共著ですが)。日本経済がどういう風に危ないのかとても明快に書かれていて、是非多くの人に読んでもらいたい本です。でも、多少は経済学をかじってないと、ちょっぴり難しいところもあるかもしれません。以下、重要なところだけピックアップしていきます。



1.国の借金はやばい水準に達している

借金はいけないこと。当たり前なんですけどね。ただ、赤字であること自体はさほど問題ではありません。返す見込みがあればいいんです。会社と同じですね。赤字でもキャッシュフローが黒なら何とかなりますし、逆に数字上利益が出ていてもお金が無ければつぶれます(いわゆる黒字倒産)。

本書では国の財政が既にやばい水準であると判断する理由が数字をもって語られています。具体的にはまず郵貯の破綻という形で現れてくるでしょう。詳しくは後述。鳩山政権は埋蔵金とか言ってましたが、現状を見る限りそれも期待できそうにありません。

2.借金できない以上、効率化しか景気回復の道は無い

需要が増える→たくさん売る→儲かる→所得が増える→需要が増える→たくさん売る→・・・

これが景気回復のサイクルです。だから「需要が増える」だとか「所得が増える」だとかのためには、バラ撒き政策も一理ある、というよりケインズ以来王道の政策ではあります。ただし財政に余裕があればの話。

今は財政ボロボロなので、仕方なくもっと地道に行くしかありません。生産方法を効率化して、費用を減らして「儲かる」ようにするとか。あるいは研究開発を効率化して、魅力的な商品を作り「たくさん売る」だとかです。そのためには効率的な投資がなされなければなりません。

3.郵貯は効率を阻害する害悪

国民の貯金→郵貯→国

国債の大部分は実は我々国民が引き受けています。でも、間に郵貯が入っているため、それが見えにくくなっているのです。見えにくいのをいいことに政府は借金し放題。民間に直接投入されれば効率的に使われるはずのお金が、国を介することにより無駄に使われてしまいます。

ちなみに、その郵貯のキャパももうかつかつです。亀井さんが郵貯の限度額引き上げとか言ってるのが何よりの証拠です。ただの延命策に過ぎません。

もちろん郵貯だけが非効率なのではありません。だから小泉改革で官から民へ、中央から地方へという政策が実行されました。

4.労働者保護のせいで失業率はむしろUP

派遣の規制緩和とか、小泉・竹中政権で一番批判されたところですね。でも、労働者を保護しすぎちゃうと、企業はみんな外国に逃げてしまいます。コストがかかりすぎちゃいますから。そのため

失業率UP→需要が減る→売れない→儲からない→失業率UP→・・・

目先にとらわれてギャーギャー批判したため、結局自分たちの首を絞めることになってしまうのです。ほんと国民って馬鹿ですね。マスコミも馬鹿です。麻生政権や鳩山政権も。まぁ、小泉さんたちもやり方にまずい点はあったかなと辛坊さんは書いています。セーフティネットとかの部分ですね。思いやりのある素振りくらいは必要だったのかもしれません。

5.小泉・竹中路線はやっぱり凄かった

上で書いてきたので十分だと思いますが、実際の失業率や経済成長の数字を見ても、成果ははっきり出ていたようです。それを安倍、福田政権が日和、麻生政権がひっくり返し、鳩山政権が引っ掻き回してしまいました。本書を見てると、基地問題どころじゃないんじゃないのと心配になってしまいます。沖縄の方々には申し訳ないけど、優先度として果たして国政の上位に来るものなのかなと。

他にも色々な論点が本書では書かれていますので、是非直接確認していただきたいところです。それにしても、先のレビューでみたフィレンツェの状況と酷似してるようなきがしてならないのですが・・・日本、もう駄目かもしれないな。そろそろ自衛モードに入らないとまずいような気がします。

評価:★★★★★

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