2010年5月1日土曜日

「天地明察」(冲方丁)のレビュー このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

この作品では「関孝和」と「本因坊道策」という、算術と囲碁の二人の天才が登場します。それぞれの分野ではどちらにもかなわない主人公の「渋川晴海」。そんなちょっと情けない彼が成し遂げた「改暦」の偉業を描く、読後感健やかなお話でした。



魅力的な人物がたくさん登場する本作品。なかなかデレない「えん」さんが最萌えキャラであることは異論の少ないところでしょうが、囲碁の申し子たる棋聖「本因坊道策」の描かれ方も負けていません。なかなか囲碁に対して本気にならない主人公に、むきになって突っかかる様は、思わず笑みを誘われます。

そして、前半は名前だけでなかなか登場しない「一瞥即解」の算術家「関孝和」。登場するや否やの晴海への罵倒っぷりは惚れ惚れとしてしまいます。天才を前にしたときの凡人のあり方は難しいですね。ましてや自分に多少は自信のある人だとなおさらです。しかし、こと暦の話になると「数理」の才能だけではなしえない。

天理は数理と天測のどちらが欠けても成り立たぬ。

として、若い頃から天測を重ねてきた晴海に自身の研究成果を託す孝和はとても男前です。私も凡人なりに、才能だけでなしえない何かを成し遂げられれば良いなと思います。

個人的には天測仲間の二人の爺さん「建部昌明」と「伊藤重孝」が良い味を出していたように思います。素敵な爺さんキャラが出てくる作品に外れなしというのが私の持論です。

一旦改暦勝負に敗れた後に、巻き返す様をもう少し詳細に書いてほしかったなという気がするのですが、本の分量的には厳しかったのでしょう。なんにしろ、すっきり終わって後味の良い作品でした。

評価:★★★☆☆

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