裏書にある「スパイ」とか「ミッション」とかいう言葉はあまり気にしないほうが良いと思います。自分の本音を隠すための擬態をそのように称しているのですね。
筆者らしい設定とは思いつつも、最初は何とも気取っているように感じられて、ちょっぴり抵抗を感じました。しかし、これが読み進めていくうちに徐々に心地良いものに変わっていくのだから不思議です。
なんといっても、4人の少年少女たちのキャラクターが素敵です。人当たりが良かったりチャラかったりする彼らの裏に隠れた事情が、一人につき一話ずつ順に明かされていきます。
その事情というか真相というかは、小説的に見れば必ずしもインパクトのあるものではありませんが、むしろその普通さが彼らの仲間内で見せる素っ気なさと相まって、作品全体を非常に良い雰囲気に仕立てあげています。
一応ミステリ要素もしっかり入っていますが、ストーリーを引き立てるための材料程度の扱いなので、そちら方面はあまり期待しすぎないほうが良いかもしれません。
終わり方もちょっとしんみりしつつ未来を見据えた感じで、とても良かったと思います。あまり派手でない、素っ気ない空気の作品が好きな方にはお勧めです。ミステリというよりは青春小説の佳作だと思います。
評価:★★★☆☆