2010年11月5日金曜日

熱帯夜(曽根圭介) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

ミステリーテイストな中短編3作からなるホラー短編集。ホラー文庫と知らずに買いました。怖いの苦手なんですが、気付いたのは3作目。ホラーというよりバイオレンス小説という印象です。



前に読んだ「沈底魚」は警察ミステリでしたが、なかなか多芸ですね。ただ、作品の根底に流れるものは変わらない気もしました。以下、各話の感想です。

■ 熱帯夜
表題作にして日本推理作家協会賞短編賞受賞作だそうです。分類が難しそうな作品ですが、ホラーというよりはミステリの色合いが強いかと思います。暴力描写は人によっては少しきついかもしれませんが、トリッキーな仕掛けと収まるべきところに収まる収束が素晴らしいです。

■ あげくの果て
高齢化社会が行き着く可能性の一つを描いた架空世界物。ネタバレになりそうなので内容には触れにくいですが、ちょっと救われない感じの話は私的にはあまり好みではなかったかも。逆に苦めの作風が好きな方にはお勧めです。

■ 最後の言い訳
本書で最もホラーな作品。怖さはそれほどでもありませんが、なかなかエグイゾンビ物です。面白い設定ですが、人間側の初期対応や人類存続の可能性という点で、少々無理があるような気もしました。まあ、そのあたりつつくのは無粋ですね。ラストはこうじゃなきゃいいなと思っていたとおりのオチでちょっと鬱になりました。

表題作をはじめ、全般的にミステリ的な仕掛けが施されているのは、さすが乱歩賞作家というところでしょうか。ただ、トリックそのものは、それほどあっと言わせるものでもなかったかもしれません。苦さ、痛さといった雰囲気が本書一番の特徴かと思います。ちょっと私としては苦手な作風でしたが、好きな人なら凄くはまりそうな作品です。

評価:★★☆☆☆

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