2010年11月28日日曜日

折れた竜骨(米澤穂信) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

中世ヨーロッパが舞台ということでもう少し重い話かと思ったら、そうでもありませんでした。ボーイミーツガールっぽい要素もあって、気持ちよく読める作品です。メインの仕掛けも秀逸。エンディングもお見事。文句ありません。



殺された領主の娘、16歳のしっかりもの「アミーナ」がヒロインにして語り手となります。一人称のミステリということで、なんとなく警戒心を持ちながら読んでいたのですが、結局最後は気持ちよく騙されることになりました。

探偵役は東方からやってきた「聖アンブロジウス病院兄弟団」の騎士「ファルク」とその従士「ニコラ」です。魔法を駆使する「暗殺騎士」を追ってきた彼ら自身も対抗魔法の使い手とのこと。

魔法の設定で制約条件をつけるやり方は西澤保彦さんみたいだなと思っていたら、案の定あとがきでも触れられていました。こういう特殊条件をつけるミステリというのは私の大好物です。

デーン人の襲来に備えて雇われていた傭兵たちも、色々事情を抱えたものばかり。それぞれの事情が解き明かされていくクライマックスシーンもさることながら、胡散臭さを一転させる戦闘シーンでの大活躍はみな素敵でした。特にコンラートが良いポジションのキャラだったと思います。

駄目兄貴「アダム」との後継者争いっぽい話も出るかと思いましたが、それは次回にお預けでしょうか。そもそもあの引き方、このタイトルで次巻がないとも思えないので、座して待つことにいたします。シリーズ物の成長物語になってくれるようだと嬉しいですね。

評価:★★★★★

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