2011年1月30日日曜日

琥珀のマズルカ(太田忠司) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

現代ファンタジーとでも言うのでしょうか。あらすじが説明しにくいのですけれど、特異な設定を手堅く纏め上げた小粋な連作短編集です。流石はベテラン作家といった手際ですが、ちょっとまとまりすぎの感もなくはないかも。



警察や医者の手に負えない状況で頼られるのが「夢追い」の「マズルカ」です。基本は事件が起こるたびに駆け込まれる「ドラえもん」パターンですが、一連の事件の背後にはマズルカが追っているある人物が黒幕として動いています。

魂の離脱が医学的に認められた世界のお話となります。症状は2つ。

一つは魂が離れかけた「離魂(りこん)」という状態で、これを治せるのが「整魂師(せいこんし)」。霊感みたいな素養が必要で、語り手ポジションの刑事「桃内大輝(ももうちだいき)」がこの素養の持ち主です。

二つ目は魂が迷子になってしまう「魂睡(こんすい)」という状態で、これは「夢追い」と呼ばれる人に探し出してもらわなければなりません。マズルカはこちらにあてはまります。

ファンタジックな設定ではありますが、警察小説の体をなしているため、どちらかというと渋めの世界観です。マズルカは普段バーでピアノを弾いていて、警察への対応にも微妙にクールでそれっぽい感じ。

整魂師の両親を持つためいいように使われている桃内をはじめ、魂の世界でのマズルカのパートナー「琥珀」、それに謎めいた背景をもつ酔いどれ少年、自称マズルカのマネージャ「ケイ」など、サブキャラもなかなか魅力的で良いです。

基本的にミステリではないと思いますが、ミステリ風の構成ではあります。このあたりは筆者の本領発揮というところでしょうか。特に第3話では「素人探偵」なるものが出てきます。彼は他の作品で出てくる人物なのですかね?結構よさげなキャラなのですが、少なくとも本書では使い捨てです(笑)

ユニークな設定を見事に纏め上げた完成度の高い作品で、解決もなかなかお見事。ただ、ラスボスはもう少し強そうな感じでも良かったかなという気がします。全体的にまとまりすぎな印象はなくもないですが、そのぶん安心して読める作品ということは言えるかと思います。

評価:★★☆☆☆

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