2011年1月2日日曜日

ローマ人の物語〈33〉迷走する帝国〈中〉(塩野七生) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

ペルシアの台頭、ゴート族の大襲来と、まさに七難八苦といったローマの惨状。数年でコロコロ帝位が入れ替わっていきますが、日本の政治だって似たようなものだとはいえます。ただ、皇帝のすげ替えが実力行使しかないってのが陰惨です。



この頃のローマは現在の日本によく似ているなというのが本書を読んでの私の印象。国境付近で苦戦の連続、トップに担ぎ上げられた皇帝たちの弱腰姿勢など。まあ、危機にある国というのはどこも同じようなものかもしれません。

もっともペルシアはともかく、ゴート族の侵入については尖閣どころでない、日本で言えば大坂か名古屋を襲撃されたくらいのインパクトがあったようです。大帝国として平和を享受してきた代償として、国境以外には軍事力ないところを容赦なく叩かれてしまいます。

ローマの皇帝選出方法自体にも問題はありそうです。選挙があるわけではないので、政権交代の手段は暗殺しかありません。軍に人気のある人物が、その力を背景に帝位を継ぐわけですが、空白期間を作らないために元老院もしぶしぶ承認せざるを得ないのが弱いところです。

マクシミヌス・トラヌスは、いってみれば長嶋茂雄さんがいきなり首相になったかのような皇帝といえるかもしれません。一応軍事には才能をみせて連戦連勝を重ねますが、元老院に嫌われて結局早々と謀殺。万人を納得させる血統とか正当性といったものが、どうしても重要になりますね。

ヴァレリアヌスは実力、実績、血統の全てを備えた理想的な皇帝だったようです。しかし在位7年ののち、ペルシアとの戦争で寄りにも寄って敵の手に落ちてしまいます。どうやらペルシア王シャープールが相当汚い手をつかったようで、全く持って運のないことです。

皇帝が頻繁に変わりつつも、個々人についてはそれなりの人材だったようで、ここはさすがローマといわざるを得ません。それでも苦境に陥ったのは、やはり周辺環境の変化と平和ボケなのでしょう。危機はまだまだ続きます。

評価:★★★☆☆

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