2010年12月11日土曜日

サクラダリセット4 GOODBYE is not EASY WORD to SAY(河野裕) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

今回は短編集だからと軽い気持ちでいたら、やはりなかなか侮れませんでした。特にお見舞いの話と「ホワイトパズル」が秀逸。後者はシリーズ外の作品ですが、同じ超能力物なので違和感なく読めました。



色々な超能力に絡む問題を解決していくという設定は、西澤保彦さんの「神麻嗣子シリーズ」にちょっと似ていますね。このシリーズ、結構短編向きな気がします。以下、各話の感想です。

■ ビー玉世界とキャンディーレジスト
「浅井ケイ」と「春埼美空(はるきみそら)」の高校における奉仕クラブデビュー戦。ビー玉のなかに閉じ込められた少女を助けるお話しです。自分から無意識に飛び込んで出られないとか、これほど使えない超能力というのも珍しいんじゃないかと思います(^^;

■ ある日の春埼さん -お見舞い編-
掌編。クールというよりは無感情な春埼さんですが、ケイの入院に際しお見舞いに行くようクラスメートの「皆実未来(みなみみらい)」に炊きつけられます。恋愛感情なにそれ?な感じなのに、その行動ははにかむ少女以外の何者でもないという、ギャップ萌えラブコメの傑作です。

■ 月の砂を取りにいった少年の話
クールに猫と戯れる少女「野ノ尾盛夏(ののおせいか)」との出会い編。盛夏の気を引こうとする少年「日下部翔太(くさかべしょうた)」君の不遇っぷりに涙を禁じえません。メインのネタがちょっとアンフェアっぽいなと思ったけど、良く考えたらミステリじゃなかったですね。というくらい話の骨格がミステリっぽいのです。

■ ある日の春埼さん -友達作り編-
掌編。ケイに言われて盛夏と友達になりにきた春埼。色々間違っていますが、そんな彼女と波長のあう盛夏も色々壊れています。小説のなかの美少女は空気を読まなくても許されるのが羨ましいですね。

■ Strapping / Goodbye is not an easy word to say
なぜ春埼はケイに命じられないとリセットを使えなくなったのか。「相麻菫(そうますみれ)」が死亡した直後のお話しです。わけありげなお姉さん「宇川沙々音(うかわささね)」さんの登場は今後への伏線でしょうか。柵を作る能力というのも謎ですが、キットカットやコアラのマーチが好きみたいなので悪い人ではないのでしょう。

■ ホワイトパズル
シリーズ外作品。いわゆる「時をかける少女」ものですが、単に時を跳ぶのでなく、互いの時間の自分が入れ替わるという設定がユニークです。メインのオチ自体は予測できるものなのですが、話の持っていきかたや収束の仕方が素晴らしいです。

短編集ということで「大きな物語」が抑え気味な分、個々のキャラクタに焦点が当たっているのが嬉しいところです。超能力物としての設定自体もお見事。このシリーズ、短編ものなら延々と続けられそうなんですが、そういう感じでうまいことシリーズまわして欲しいですね。

評価:★★★★☆

関連レビュー:
サクラダリセット3 MEMORY in CHILDLEN(河野 裕)

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