2011年4月23日土曜日

香菜里屋を知っていますか(北森鴻) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

ビアバー香菜里屋を舞台にしたミステリ短編集第4弾にして、シリーズ最終作です。ラストに相応しい常連達のエピソードが綴られていき、鳥肌が立ちそうなフィナーレになるかと思いましたが、肝心の最終話だけはあまり好みに合わなかったかもしれません・・・



花の下にて春死なむ」から始まる本シリーズは、特に愛着を持っておられるファンも多いのではないかと思います。なんといっても香菜里屋のマスター「工藤」による料理メニューの数々が素晴らしい。

私が北森作品のなかで一番好きなのは「メイン・ディッシュ」なのですが、こちらも料理を主題にしたもの。なんとなく料理の薀蓄が語られるだけでテンションが上がるといいますか、そういうところが私のつぼみたいです。

シリーズの完結として位置づけられる本書ですが、各エピソードの内容も最終巻に相応しいものとなっています。とりわけ私が印象に残ったのは2話目の「プレジール」。ああ、あの人が・・・と感慨が溢れるようでした。

そして、ラスト直前の第4話では「香菜里屋」という店名の由来も明かされ、非常に盛り上がる気持ちで第5話を向かえたのですが・・・うーん、この最終話はちょっと私には合わなかったです。

ネタバレになりそうなので一応反転で。

私は「蓮杖那智」シリーズも「冬狐堂」シリーズも大好きなのですけれど、二人がコラボする作品は少々苦手なのです。ちょっときつめのスーパーウーマン二人が、お互いに認め合ってる風なのがなんとなく胡散臭く感じられて・・・

で、この最終話は二人ともが登場、というよりゲストで無くメインを掻っ攫ってしまっているのがとても受け入れがたかったのです。工藤が不在という状況はまだよいにしても、せめて香月なり常連達なりによる解決をみせてほしかったかなと。

上記の理由から、個人的には少し残念な感じのする終幕でしたが、同じ理由から本書が好きと感じられる方もたくさんおられるでしょうね。なにしろ北森ファンとしては出し惜しみの無い、オールキャストの展開ですから。

ネタバレ終わり

ちなみに本書には未完の「双獣記」という作品があわせて収録されていますが、こちらのほうは私は読んでいません。熱心なファンであれば読むべきなのでしょうけれど、なんだか切なくなってしまいそうなので。

最終巻としては若干の不満を感じたところもありますが、その不満も愛着故ということで、シリーズ全体を通してみれば非常に質の高い読書体験を提供していただけたと思っています。筆者には感謝の念に堪えません。

北森作品の読み残しも本書で最後になるでしょうか。さびしい限りです。

評価:★★☆☆☆

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