2011年4月10日日曜日

群青神殿(小川一水) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

キラッとアイデア一閃の海洋SFです。キャラも絵もあまりあわないかなと思いながら読んでいたのですが、それを補って余りある設定の妙でした。海の怖さという意味では時世的にタイムリーになってしまった部分もあるかもしれません。



主人公達はメタンハイドレード探査チームの一員です。「鯛島俊機(たいじまとしき)」と「見河原(みがわら)こなみ」のコンビが中深海長距離試錐艇「デビルソード」を駆り、海の底を探索します。

男女二人で長時間もぐり続けるというのはどうなのかと思ったら、案の定モニョモニョな設定になっています。ただ、直接のエロイ描写がないのは安心なのかがっかりなのか。

こなみのヤンデレな雰囲気は悪くないんですが、ちょっと童顔過ぎるイラストが個人的にはあまり合わないかなと。絵柄自体は嫌いではないので、相性の問題でしょうか。イラスト無しのほうが純粋に楽しめたかもしれません。

ただ、本書の見所はなんといってもSF的仕掛けの部分です。詳しいところはネタバレになってしまうので言及しませんが、肝となる設定とそれをうまく生かした解決のつけ方は実にお見事です。

海洋SFということで、私の既読作品では「鯨の王」なんかが近い雰囲気になるかと思います。本書は2002年の作品の復刻版なので、刊行はこちらのほうが早いですね。

海の怖さの演出という意味では、図らずもタイムリーなトピックの作品になってしまったかもしれません。これが小説でなく映画だったら、自粛の羽目に陥っていたかもしれません・・・(^^;

朝日ノベルスということもあってイラスト付きのラノベ風な装丁となっていますが、そういうところを期待すると肩透かしになるかもしれません。もっとも、筆者のファンであればまず満足できるであろうことは間違いないでしょう。

評価:★★★☆☆

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