2011年7月17日日曜日

ファウンデーションの彼方へ(アイザック・アシモフ) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

前3部作から約30年を隔てて発表された、ファンデーションシリーズ第4作です。前作までのちょっとトリッキーな構成とは趣きを異にする、正面突破の大作。私も本書は久しぶりに読みましたが、記憶に残っていたよりセンスオブワンダーしてましたね。






セルダンプランも折り返しの500年。すべてが順調にいっていることに逆に疑いを抱いたターミナスの若き議員「ゴラン・トレヴィズ」ですが、先鋭的な主張を市長から疎まれ、地球探しを口実にターミナスを追放される事態に陥ります。市長の内に秘めた狙い、第2ファウンデーションの思惑、そして第3勢力「ガイア」の正体とは?

ファンや編集者のプレッシャーに押された形での執筆だそうで、半ば伝説となっていた3部作の続編ということもあって、本人も相当書きづらかったようですが、それを本作のような形で昇華させたのは見事というほかありません。アシモフの数ある著作のなかでも指折りの傑作に仕上がっているかと思います。

本作品の特徴としてよく言われるのがアシモフの既存作品群における世界観の統合です。筆者の著作においては「銀河帝国」と並んであまりにも有名な「ロボット」シリーズの流れを組み込んだ他、「永遠の終わり」などの作品設定にも言及されています。

ただ、それらの作品を読んでいなくても、十分に本書だけで楽しめる内容となっています。従来の作品を読み込んでいるファンへのサービスを盛り込みつつ、新規の読者にも十分配慮するバランス感覚は流石の一言。ただ、単体でも読める内容とはいえ、3部作についてはやはり先に読んでおいた方が無難でしょう。

私が本書を読むのは20年ぶりくらいになるでしょうか。たまたまアシモフにハマっていた時期に、書店で3部作の続編がハードカバーで発売されているのを発見した驚きは今でもよく覚えています。高校生時代でお小遣いもあまり自由にならないなか、迷わず手に取りレジに持っていきました。

あとがきでも触れられていますが、当時の翻訳と比べて主人公の名前が「トレヴァイズ」から「トレヴィズ」に、「ゲイア」が「ガイア」にかわっています。人名はともかくとして、後者についてははラブロックの思想が下敷きになっているはずなので、日本語的にも「ガイア」のほうが通りが良いように思えますね。

ヒューゴー賞を受賞しているだけあって、本書は単独でも高いエンターテインメイント性を備えていますが、実は続編に向けてちょっぴり含みが残されています。第5作「ファウンデーションと地球」とあわせて「ゴラン・トレヴィズ」編と言っても良い内容で、続巻ではロボットものとの融合度合いがますます強くなっていきます。

文庫版では上下巻となる、計700ページに及ぶ大著。それなりに読むのに骨が折れる作品ではありますが、構成自体はむしろシンプルといってよいくらいのものです。3部作が技なら本書は力の1冊。まさに後々まで語り継がれるにふさわしい、SF史上に残る傑作と言ってよいでしょう。

評価:★★★★★

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