2011年5月17日火曜日

モップの精は深夜に現れる(近藤史恵) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

ギャルっぽいファッションのスーパー掃除人「キリコ」シリーズ第2弾。各話でキリコと知り合う登場人物たちとの交流に、大変心温まります。前作のネタバレが若干入っているので、未読の方は順番に読んだほうが良いかと思います。前巻のレビューはこちらから。



全4話ですが、最終話は旦那の大介が主役となる少し毛色が違った話なので、3+1話といったほうが良いかもしれません。以下、各話の感想です。

■ 悪い芽
実際にキリコみたいなファッションの清掃作業員がいたら、私も文句は言わないまでも眉はひそめるかなという気がします。最初は八つ当たり気味に難癖をつけながらも、徐々にキリコと打ち解けていく中間管理職のおじさん「栗山」。彼にキリコが持ち込んだ事件の予兆とは・・・

■ 鍵のない扉
かわいらしい名前と実際とのギャップに密かなコンプレックスを持つ、零細編集プロダクション勤務の「本田くるみ」。その名前に対するキリコの解釈が、くるみの気持ちをぐっと楽にします。頭の回転だけではない、キリコが人を見るスタンスが現われているようで心地よいです。

■ オーバー・ザ・レインボー
彼氏の二股が発覚してへこみまくるモデル事務所勤務の「葵」。例によってキリコとの交流の中で立ち直っていくのですが、それより面白いなと思ったのは、彼女がモデルになろうと思った経緯です。女性はガラッと変わりますからねー・・・いつも異化効果にやられっぱなしです。

■ きみに会いたいと思うこと
旦那の大介視点のお話となります。祖母の看護をまかせっきりなことに後ろめたさを持つ大介。そんななかキリコが1ヶ月の旅行に出たいと言い出します。快諾する大介ですが、キリコ不在の状況に徐々に不安を募らせていくことに。ちょっと重めの話題も入ってますが、後味はすっきりさわやかなのが良かったです。

ミステリとしてはやはり最終話が秀逸だったでしょうか。ただ、どちらかというと色々な職業の裏側を垣間見せることこそ本書の主眼になっているかと思います。各話の登場人物がそれぞれなかなか魅力的だっただけに、一度きりの登場というのが物足りないといえばいえるかもしれせん。

評価:★★★☆☆

関連レビュー:

天使はモップを持って(近藤史恵)

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