2011年5月1日日曜日

東京バンドワゴン(小路幸也) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

明治の創業以来3代続く古本屋「東京バンドワゴン」を舞台にした大家族物語。複雑な家庭事情は山積みながら、根底を流れるアットホームな雰囲気が素敵です。語り手が天国のおばあちゃんというのも面白いですね。



全4話の各話ごとに完結したミステリになっていますが、同時に家族にまつわる物語も進展を見せていきます。時にはこの人とこの人がくっついちゃっていいの?と人物関係図を見返すしてしまうことも。

下手をするとドロドロしかねない雰囲気の設定を、終始暖かなほんわかムードとしてくれているのが、語り手であるところの天国のおばあちゃん「サチ」。

霊感の強い「紺(こん)」とは会話を交わしたりすることもありますが、基本的には現世に影響を及ぼさない神の視点。客観的でありながら暖かい、なんとも不思議な情緒を生み出しています。

この手の話は下手するとごちゃごちゃした話になってしまいがちかと思いますが、各話それぞれにしっかり焦点を絞りながらも、家族達が満遍なく活躍できるような話となっているのはさすがの一言です。

ミステリとしてみた場合あまり派手な仕掛けはありませんが、それも本書ではプラスに働いているようです。基本的には家族の暖かかさを描く作品ですので、あまり尖がったネタ仕込では興ざめになってしまうのでしょう。

これだけ大人数の家族だと色々な方向へ話が広がりそうで、今後の展開が楽しみです。個人的には「花陽(かよ)」と「研人(けんと)」の小学生コンビの成長に期待です。

評価:★★★☆☆

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